宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年7月31日、初期機能確認運用中の先進レーダ衛星「だいち4号(ALOS-4)」に搭載されているLバンド合成開口レーダー(SAR)「PALSAR-3」で取得した初観測画像を公開しました。【最終更新:2024年8月1日11時台】
「だいち4号」は2014年5月に打ち上げられた陸域観測技術衛星2号「だいち2号(ALOS-2)」の後継機として開発されたJAXAの地球観測衛星で、PALSAR-3の他に船舶自動識別装置(AIS)の信号を受信して船舶情報を取得する船舶自動識別信号受信器「SPAISE3」、静止軌道上の衛星と光衛星間通信を行うための低軌道衛星用光ターミナル「OLLCT」が搭載されています。
日本時間2024年7月1日12時6分に「H3」ロケット3号機で打ち上げられた「だいち4号」は、7月3日までに太陽電池パドルや各アンテナの展開が正常に行われたことが確認されており、衛星全体や搭載機器の機能確認を約3か月かけて行う初期機能確認運用期間に移行していました。
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こちらが今回公開された画像の1つで、日本時間2024年7月15日11時7分頃に分解能3mの高分解能モードで初めて取得された観測画像です。観測幅は100kmで、北海道の札幌から苫小牧にかけての地域が観測されました。
次はPALSAR-3の標準的な観測モード(分解能3m・観測幅200km)で日本時間2024年7月15日23時38分頃に取得された関東から富士山周辺にかけての観測画像です。「だいち2号」のLバンド合成開口レーダー「PALSAR-2」の観測幅は50kmでしたが、能力が向上した「だいち4号」のPALSAR-3では同じ分解能でより広い範囲を一度に観測することが可能です。
続いて掲載した2点は前掲の画像の赤枠で囲まれている富士山周辺と東京都心の拡大画像です。画像の色は緑色が植生、明るい紫色と黄緑色が市街地、暗い紫色や黒色は裸地および水面を表しています。
こうした地上の観測データを日頃から蓄積しておけば、地震や噴火といった災害が発生した後の観測データと平常時の観測データを比較して、大地がどのように変化したのかを知ることができます。また、平常時の観測データを分析すれば進行しつつある地質活動を早期に発見することにもつながりますし、温室効果ガス排出に影響を及ぼす森林伐採や、河川管理施設・港湾施設といったインフラの老朽化にともなう変位などの文明活動に由来する変化も把握することができます。
こちらはボリビアとの国境に接するブラジル・ロンドニア州付近の観測画像で、2006年から2011年まで運用されていた陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」のLバンド合成開口レーダー「PALSAR」、「だいち2号」のPALSAR-2、「だいち4号」のPALSAR-3で取得されたものが左から順に並べられています(いずれも分解能10m)。「だいち」と「だいち2号」では3回の観測が必要だった範囲を、「だいち4号」は1回の観測でカバーしていることがわかります。
こちらは前掲の画像の赤枠で囲まれている部分をそれぞれ拡大した画像です。2007年のPALSAR、2014年・2015年のPALSAR-2、2024年のPALSAR-3と時間が経つにつれて、画像内の黒い範囲が増えていることがわかります。JAXAによると画像の色分けは関東~富士山周辺の観測画像と同様で、緑色は森林、暗く見える部分は森林が損失した場所と考えられるということです。
分解能3mの高分解能モードによる観測頻度は、たとえば日本については「だいち2号」の年4回から「だいち4号」は年20回に増加します。平常時のデータをより高い頻度で取得できるようになることから、「だいち4号」ではこうした地上の変化を従来よりも把握しやすくなることが期待されます。
Source
- JAXA - 先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)搭載Lバンド合成開口レーダ(PALSAR-3)の初観測画像を公開
文・編集/sorae編集部