
(引用元:ESA/Hubble)
今回紹介するのは、2007年1月31日にESA/Hubbleから公開された、ペガスス座の方向約150光年先にある太陽系外惑星「HD 209458b」の想像図です。主星のすぐそばを公転するこの惑星は、強烈な恒星光によって大気が極度に膨張し、宇宙空間へと流出しつつある状態にあることが分かっています。

系外惑星研究の"原点"ともいえるホットジュピター
HD 209458bは、トランジット(惑星が主星の前を横切る現象)が初めて観測された系外惑星として知られています。木星とほぼ同サイズの巨大ガス惑星でありながら、主星からわずか約700万km(地球〜太陽間の約20分の1)という至近距離を約3.5日で一周しています。主星に近すぎるあまり大気が極度に加熱されて膨張した、いわゆる「ホットジュピター(熱い木星型惑星/灼熱巨大惑星)」の代表格です。
ハッブル宇宙望遠鏡(HST)によるトランジット観測では、大気に含まれるナトリウム、酸素、炭素、水蒸気、二酸化炭素といった成分が次々に検出され、系外惑星の大気を詳細に調べる研究の先駆けとなりました。さらに、2007年に発表された研究では、極めて希薄な大気の上層部に温度が約730℃から約14700℃へと急上昇する遷移層が存在し、毎秒約1万トンという猛烈な勢いで高温のガスが宇宙空間へ流出していることが明らかになっています。
ウェッブ宇宙望遠鏡が明かした大気組成の詳細
発見から四半世紀以上が経過した現在も、HD 209458bは系外惑星研究の第一線にいます。ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による透過分光観測では、大気中に水蒸気(H2O)や二酸化炭素(CO2)の強い吸収が確認され、大気の金属量(重元素の割合)が太陽と同程度かやや高いこと、炭素と酸素の比率(C/O比)が低いことが示されています。こうした大気組成の情報は、この惑星がどこで、どのように形成されたのかを探る手がかりとなっています。
ハッブルが切り拓き、ウェッブが深めた「蒸発する惑星」の研究。系外惑星大気科学の原点ともいえるHD 209458bは、今なお新たな発見をもたらし続けています。
編集/sorae編集部
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