
(引用元:ESA/Hubble)
こちらはESA/Hubbleが2022年5月6日に公開した、「かみのけ座」の方向約6000万光年先に位置する棒渦巻銀河「NGC 4548」の画像です。NGC 4548はメシエカタログでは「M91」として知られており、おとめ座銀河団に属する銀河のひとつです。
画面上部の中央付近から左下に向かって、銀河の外縁部を横切る白い線が写っています。この線が何か分かりますでしょうか?

この正体は、観測中のハッブル宇宙望遠鏡の視野にたまたま写り込んだ、太陽系内の小惑星の軌跡です。複数の小惑星の軌跡のようにも見えますが、実はこれらはすべて、1つの小惑星が残したものです。
線が途切れているのは、ハッブル宇宙望遠鏡が地球の周りを回っていることに起因します。約95分で地球を1周するハッブル宇宙望遠鏡は、地球によって観測対象が隠される時間帯があるため、同じ天体を連続して撮影し続けることができません。観測が中断している間も小惑星は移動し続けるため、次の露光が始まったときには記録される位置が大きくずれており、結果として破線のように写るのです。
soraeが過去に紹介した「UGC 12158」の画像でも小惑星の軌跡がカーブを描いていましたが、これはハッブル自身の軌道運動が生み出す「視差効果」によるものです。今回のNGC 4548の画像でも、軌跡をよく見ると直線ではなく、わずかに曲がっていることがわかります。
この視差効果による曲がり具合を分析することで、観測時の小惑星までの距離を求めることができます。地上の望遠鏡では難しく、地球を周回するハッブル宇宙望遠鏡ならではの手法と言えます。

このように、遠方の銀河を撮影した画像に、太陽系内を移動する小惑星の軌跡が偶然写り込むことがあります。今回の白い線も、単なるノイズではなく、小惑星までの距離などを探る手がかりになります。天文画像には、本来の観測対象とは別の発見が残されていることもあるのです。
編集/sorae編集部
関連記事
- この破線の正体は? ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河の画像に出現
- ハッブルの画像から発見、矮小銀河の観測中に写り込んだ小惑星の軌跡
- ブラックホールが残した「星の軌跡」 ハッブル宇宙望遠鏡の画像から偶然発見
参考文献・出典
- ESA/Hubble - Broken Asteroid Trail in NGC 4548
- HubbleSite - Curved Trails of Small Asteroids
- ESA/Hubble - Global Citizen Science Project Finds Over 1700 Asteroid Trails in Hubble Images
- NASA NTRS - Asteroid Trails in Hubble Space Telescope WFPC2 Images
- A&A - Hubble Asteroid Hunter: I. Identifying asteroid trails in Hubble Space Telescope images










