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フランス国立科学研究センターのGiacomo Cacciapaglia氏を筆頭とする研究チームは、ブラックホールが“分裂”する条件を理論的に調べた研究成果を発表しました。ブラックホールは合体時に放出された重力波が観測されていますが、分裂することはあり得るのでしょうか。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「Physical Review D」に掲載されています。

接近した恒星を破壊するブラックホールの想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)
【▲ 接近した恒星を破壊するブラックホールの想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

事象の地平面の面積は減らない

ブラックホールといえば、密度が無限大になる「特異点」が、光さえ脱出できない「事象の地平面」と呼ばれる境界に囲まれているのが最大の特徴です。そのため、電磁波でブラックホールを直接観測することはできません。

アインシュタインの一般相対性理論では、ブラックホールのエントロピー(乱雑さの度合い)は事象の地平面の面積に比例します。熱力学の法則に従えばエントロピーが減ることはありませんから、これに対応して事象の地平面の面積も減らないことになります。この法則は「面積定理」と呼ばれています。

この宇宙に存在する天体は、何らかの理由で2つ以上に分かれることがあります。身近な例として、彗星は太陽に接近しすぎて崩壊することがあります。では、ブラックホールが分裂することは起こり得るのでしょうか?

研究チームによると、ブラックホールの場合、分裂の鍵となるのはエントロピーです。回転していないブラックホールを考えると、2つに分かれた後の事象の地平面の合計面積は、元のブラックホールと比べて少なくなってしまいます。前述の面積定理に反することから、少なくとも回転していないブラックホールの分裂はあり得ないことになります。

高速で回転していても分裂は難しい

それでは、回転しているブラックホールの場合はどうでしょうか。

質量が同じであれば、回転しているブラックホールは回転していないブラックホールよりも事象の地平面の面積が小さくなるといいます。分裂した2つのブラックホールの公転に角運動量が移るとすれば、面積定理に反することなく、ブラックホールが分裂することはあり得ると研究チームは指摘します。

しかし、研究チームが試算したところ、分裂で誕生した小さいほうのブラックホールは大きいほうのブラックホールの重力を振り切れず、飲み込まれて再び1つのブラックホールに戻るとみられます。一般相対性理論のもとでは、元々の回転速度が理論上の限界に近い場合を除いて、ブラックホールが分裂することはほぼあり得ないといいます。

修正重力理論ならエントロピーが減らない分裂も

ここで研究チームが注目したのは、「修正重力理論」です。修正重力理論とは、一般相対性理論を拡張・修正した重力理論の総称です。宇宙の加速膨張の説明などを目的とするものや、一般相対性理論が成り立たなくなると考えられている、重力が極端に強い場所での振る舞いを扱うものが提唱されています。

研究チームによると、提唱されている修正重力理論の一部では、事象の地平面の面積がエントロピーに比例するとは限りません。試算の結果、ごく小さなブラックホールが分裂する場合はエントロピーが減らない可能性が示されました。

もしもブラックホールが分裂したことを示す痕跡が見つかれば、一般相対性理論では説明しきれない重力のふるまいを示す強い手がかりになると研究チームは期待しています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典