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東北大学の野田博文准教授を筆頭とする研究チームは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)のX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」と地上の電波望遠鏡による観測を通じて、物質を大量に取り込む超大質量(超巨大)ブラックホールの一つを取り巻く構造を明らかにしたとする研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されています。

今回の研究成果をもとに描かれたジェットの根元周辺の様子。東北大学のプレスリリースから引用(Credit: 東北大学)
【▲ 今回の研究成果をもとに描かれたジェットの根元周辺の様子。東北大学のプレスリリースから引用(Credit: 東北大学)】

ジェットを噴き出す仕組みに潜む矛盾

天の川銀河をはじめ、多くの銀河の中心には、質量が太陽の数十万倍~数十億倍以上の超大質量ブラックホールが存在すると考えられています。

ブラックホールに引き寄せられた物質は真っ直ぐ落下するのではなく、らせんを描きながら落下する過程で降着円盤と呼ばれる構造を形成します。降着円盤は物質どうしの摩擦などで非常に高温になり、可視光線やX線といった電磁波を放出するため、間接的にブラックホールの存在を知ることができるのです。

こうした降着円盤を持つブラックホールの一部では、「ジェット」と呼ばれる光速に近い速度で細く絞られたプラズマの流れがブラックホール周辺から噴き出しています。ジェットを生み出す仕組みはまだ完全には解明されていませんが、ブラックホールの自転のエネルギーが強い磁場を介して取り出されているとする説が有力視されています。

ただ、物質を大量に取り込むブラックホールでは、比較的低温で薄い円盤がブラックホールのすぐ近くまで広がると予想されています。こうした円盤ではジェットを噴出させるのに必要な強い磁場をブラックホールの近くでは蓄えにくいと考えられてきたため、強力なジェットが噴き出す理由は謎とされていました。

X線と電波で探るジェットの発生源

研究チームは今回、X線を捉えるJAXAのXRISMと、世界各地の電波望遠鏡をつないで高い解像度を実現する国際電波望遠鏡ネットワークを使って、おうし座の方向、地球から約4億2000万光年先の銀河「3C 120」を観測しました。この銀河では、物質を大量に取り込みながら強力なジェットを噴き出す超大質量ブラックホール(推定される質量は太陽の約6000万倍)が中心部に存在しています。

XRISMの観測では円盤に含まれる鉄が放つ特定のエネルギーのX線が捉えられました。研究チームによると、このX線は円盤の回転やブラックホールの強い重力によってエネルギーがずれて広がっています。その様子をスペクトル(電磁波の波長ごとの強さの分布)を取得して調べることで、降着円盤の内側の端がどこにあるのかがわかります。

分析の結果、円盤はブラックホールの半径の約20倍の位置で途切れており、その内側は数億度に達するとみられる高温のプラズマがブラックホールへと落下しながら流れているとみられています。

一方、XRISMとほぼ同じ時期に行われた国際電波望遠鏡ネットワークの観測では、ブラックホールに近づくほど細くなるジェットの形をもとに、ジェットの根元の半径がブラックホールの半径の約10倍以下と見積もられました。

今回の研究成果をもとに描かれたジェットの根元周辺の様子(注釈と観測データ付き)。低温の円盤がブラックホール半径の約20倍の位置で途切れ、その内側は高温のプラズマ流になっていることが示された。東北大学のプレスリリースから引用(Credit: 東北大学)
【▲ 今回の研究成果をもとに描かれたジェットの根元周辺の様子(注釈と観測データ付き)。低温の円盤がブラックホール半径の約20倍の位置で途切れ、その内側は高温のプラズマ流になっていることが示された。東北大学のプレスリリースから引用(Credit: 東北大学)】

ジェットは途切れた円盤の内側で生まれる?

研究チームは、低温の円盤がブラックホールの手前で途切れ、磁場を蓄えやすい高温のプラズマの流れに変わることで、ブラックホールの自転のエネルギーでジェットを噴き出す条件が満たされていると考えています。

東北大学によると、研究チームはさらに質量の大きなブラックホールでも同様の観測を進めているといいます。ジェットは銀河の進化にも影響を与えるとされるため、今回の成果はブラックホールと銀河の成長の歴史を読み解く手がかりになると期待されます。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典