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バーミンガム大学のBence Bécsy氏を筆頭とする研究チームは、巨大なブラックホールが合体の反動で銀河の中心から弾き飛ばされている可能性を検証した研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に掲載されています。

クエーサー「APM 08279+5255」の想像図。ドーナツ状に集まったガスと塵に超大質量ブラックホールが囲まれている(Credit: NASA/ESA)
【▲ クエーサー「APM 08279+5255」の想像図。ドーナツ状に集まったガスと塵に超大質量ブラックホールが囲まれている(Credit: NASA/ESA)】

合体の反動で動き出す超大質量ブラックホール

天の川銀河をはじめ、様々な銀河の中心には太陽の数十万倍~数十億倍もの質量を持つ超大質量(超巨大)ブラックホールが存在するとみられています。ブラックホールそのものを電磁波で直接捉えることはできませんが、周囲の物質を取り込んだり、その一部をジェット(細く絞られた高速な物質の流れ)として放出したりする活動の様子が観測されています。

超大質量ブラックホールが存在する銀河どうしが合体すると、ブラックホールも重力波(時空のゆがみが波として伝わる現象)を放って互いに周回しながら近づくようになり、その多くはやがて合体して1つのブラックホールになると考えられています。

研究チームによると、ブラックホールが合体した時に放たれる重力波の向きに偏りがあると、合体後のブラックホールはその反動で秒速100~1000km程度の速度を得る可能性があります。銀河から脱出するほどの勢いがない場合、ブラックホールは銀河中心部に集まった天体の質量がもたらす重力によって引き戻され、次第に勢いを失いながらも中心をはさんで往復するように移動し続けると考えられています。

約10万個のクエーサーを通じて10年前の予測を検証

今回検証されたのは、論文の共著者でもあるエトヴェシュ・ロラーンド大学(ELTE)のPeter Raffai氏らが2016年に発表した予測です。

銀河の中心部はドーナツ状に分布する濃い塵(ダスト)に取り巻かれていると考えられています。当時の研究でRaffai氏らは、合体の反動で移動するようになったブラックホールはその速度が速いものほど、ブラックホール周囲の物質から放たれた光が地球へ向かう途中で通り抜ける塵の量も平均して多くなるはずだと、シミュレーションをもとに予測していました。

そこで研究チームは、大規模な観測プロジェクト「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)」で得られた約10万個の「クエーサー」のデータを分析しました。クエーサーとは、ブラックホールに引き寄せられたガスが高温になって強く輝く銀河の中心核のうち、特に明るいものを指します。

速く動くブラックホールほど塵に隠されている?

今回の研究では、クエーサーの原動力となっているブラックホールの近くにあるガスと、離れた場所にあるガス、それぞれが放つ光の波長を比べました。近くのガスはブラックホールとともに移動する一方で、離れたガスは銀河の中心付近に残ることが考えられるため、両者の波長の差をもとにブラックホールの視線方向の速度を見積もることができます。

また、銀河中心部に存在する塵の量は、同程度の距離にある他のクエーサーと比べて推定しました。一般的に、塵には波長の短い光ほど吸収・散乱しやすい性質があるため、塵の量が多ければ多いほど、塵を通過した光は長い波長が残ることになります。可視光線であれば、光が赤みを帯びると言うことができます。

研究チームによる分析の結果、ブラックホールの移動速度が大きいと見積もられたクエーサーほど平均して赤っぽく見える、すなわち塵の量が多いことを示す、弱いながらもはっきりとした傾向が明らかになりました。

この結果について研究チームは、合体で誕生したブラックホールが弾き飛ばされたと考えればこの傾向を自然に説明できると述べています。ただし、他の物理現象が介在する可能性も完全には否定されておらず、今後の検討が必要とされています。

将来の重力波観測に期待

研究チームによると、前述の傾向がブラックホール合体時の反動によるものであれば、調査されたクエーサーのかなりの割合で(宇宙のタイムスケールでいえば)比較的最近になってブラックホールどうしの合体が起きていたことになるといいます。

2030年代には、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の宇宙重力波望遠鏡「LISA」が打ち上げられる予定です。研究チームは、合体が頻繁に起きているのであれば、LISAが捉える超大質量ブラックホールどうしの合体にともなう重力波も、合体の頻度に見合って多くなる可能性があると指摘しています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典