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太陽系が通過中の「局所星間雲」には超新星爆発由来の物質が蓄積されている?

ヘルムホルツセンター・ドレスデン・ローゼンドルフ(HZDR)研究所のDominik Koll博士を筆頭とする国際的な研究チームは、南極の氷床コアから検出された放射性同位体「鉄60(60Fe)」に関する新たな研究成果を発表しました。

検出された鉄60は超新星爆発で生成されたものであり、現在太陽系が通過している「局所星間雲(Local Interstellar Cloud: LIC)」と呼ばれる領域に蓄積されている可能性が高いと研究チームは考えています。今回の成果をまとめた論文は学術誌「Physical Review Letters」に掲載されています。

局所星間雲のイメージ図。現在の太陽(中央のオレンジ色)は、希薄なガスと塵が集まったこの領域を通過している最中とされる(Credit: B. Schröder/HZDR/NASA/Goddard/Adler/U. Chicago/Wesleyan)
【▲ 局所星間雲のイメージ図。現在の太陽(中央のオレンジ色)は、希薄なガスと塵が集まったこの領域を通過している最中とされる(Credit: B. Schröder/HZDR/NASA/Goddard/Adler/U. Chicago/Wesleyan)】

最近になって地球に降り注いだ「鉄60」の謎

太陽よりも8倍以上重い大質量星は、恒星としての生涯を超新星爆発という激しい現象を起こして終えます。超新星爆発では様々な元素が生成され、周囲の宇宙空間に向かって放出されますが、そのうちのひとつが鉄60です。

鉄60は半減期約260万年の放射性同位体であり、地球が形成された約46億年前に存在していたものはすでに崩壊しています。ところがこれまでの研究では、数百万年前の深海堆積物や、より新しい約3万3000年前にまで遡る深海堆積物、さらには採取時点で20年以内に降った南極の雪からも鉄60が見つかったことが報告されていました。

近代的な天文観測が行われるようになる前から、人類はたびたび超新星爆発を目撃してきました。しかし、鉄60が地球にもたらされるには、太陽系のすぐ近くで爆発が起こらなければなりません。それに該当しそうな超新星爆発は起きていないことから、見つかった鉄60の起源は大きな謎となっていたのです。

南極の氷が記録していた「宇宙の環境変化」

そこで研究チームは、近隣の星々の間に広がる希薄なガスと塵(ダスト)の集まりである、局所星間雲に注目しました。Koll博士は「局所星間雲が鉄60を含んでおり、長期間にわたってそれを保存しているのではないかと考えました」と、研究の動機を語っています。

研究チームはこの仮説を検証するために、4万年前~8万年前にかけて形成された南極の氷床コア約300キログラムを化学的に処理し、数百ミリグラムの塵を抽出。10兆個の原子の中にほんの数個しか含まれない微量な鉄60を検出できる、オーストラリア国立大学の重イオン加速器施設(HIAF)を用いて分析を行い、太陽系が現在の環境にいつ突入したのかを探りました。

その結果、4万年前~8万年前の地球に到達した鉄60の量は、近年の雪や堆積物から検出された量よりも少ないことが明らかになりました。宇宙のタイムスケールから見れば、数万年という非常に短い期間で鉄60の飛来量が変化していることになります。

さらに古い時代の氷床コアが過去の環境を紐解くことに期待

この結果は、2つの可能性を示唆しています。1つは「太陽系が8万年前より最近になってから鉄60が豊富な現在の領域に突入した」可能性。もう1つは「太陽系は以前から局所星間雲の中にいたが、雲の内部で鉄60の密度に強い偏りがある」可能性です。

今回の発見は、どちらのケースだったとしても、局所星間雲が過去の超新星爆発で生成された鉄60を留めておく“保管庫”のように機能している可能性を強く支持するものと受け止められています。また、太陽系が宇宙空間を移動するにつれて、地球に降り注ぐ物質の量が数万年単位で変化していることの証拠でもあります。

研究チームは次のステップとして、太陽系が局所星間雲に入る前の時代に形成された、さらに古い氷床コアの測定を計画しています。得られたサンプルは、太陽系とその周囲の環境がたどってきた歴史をより鮮明に描き出す手がかりになると期待されています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典