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スーパーアース深部に潜むマグマの海が生命居住可能性を高める磁場を生み出しているかも

これまでに6000個以上が見つかっている太陽系外惑星の研究が進む中、生命が存在できる環境を持つ「第2の地球」の発見に大きな期待が寄せられています。

注目されているもののひとつが、地球よりも質量が大きく、かつ巨大ガス惑星や巨大氷惑星よりは小さい「スーパーアース(巨大地球型惑星※1)」です。スーパーアースは太陽系には存在しませんが、天の川銀河では一般的なタイプの惑星のひとつと考えられています。

しかし、ある惑星が生命にとって真に適した環境であるかどうかを判断するには、表面の水や大気の有無だけでなく、「磁場」の存在が極めて重要になります。

今回、ロチェスター大学の中島美紀准教授を筆頭とする研究チームは、スーパーアースの深部に存在するマグマオーシャン(溶けた岩石の層)が、地球の核(コア)よりも強力な磁場を生み出し、有害な宇宙線から惑星を守っている可能性があることを明らかにしました。研究チームの成果をまとめた論文は「Nature Astronomy」に掲載されています。

マントルの最深部で磁場が生み出されているスーパーアースのイメージ図(Credit: University of Rochester Laboratory for Laser Energetics illustration / Michael Franchot)
【▲ マントルの最深部で磁場が生み出されているスーパーアースのイメージ図(Credit: University of Rochester Laboratory for Laser Energetics illustration / Michael Franchot)】

生命居住可能性の鍵を握る「磁場」の謎

地球の磁場は、太陽風や宇宙線といった放射線から大気や生命を守るシールドの役割を果たしています。この磁場は、地球の中心部にある核のうち、液体の鉄でできた「外核」が対流することで発生しています。この仕組みは「ダイナモ作用(※2)」と呼ばれています。

ロチェスター大学によると、スーパーアースのように巨大な岩石惑星の核は全体が固体か液体の状態になっている可能性があり、地球と同じようには磁場を生成しないのではないかと考えられてきました。もしも磁場がなければ、惑星は主星の活動によって大気を剥ぎ取られてしまい、その環境は生命にとって過酷なものとなってしまいます。

しかし、今回発表された研究では、「マントルの底」に別の磁場発生源がある可能性が示されました。それが「基底マグマオーシャン(Basal Magma Ocean: BMO※3)」です。

マントルの底にある「もうひとつの海」

基底マグマオーシャンとは、惑星の核とマントルの境界付近に存在するマグマの層です。

形成された直後の惑星は、その表面がマグマオーシャンに覆われています。マグマオーシャンは冷却するにつれて固まっていきますが、その際に重たい成分を含んだ溶融物が沈み込み、蓄積されることで、マントルの最深部では長期間にわたって溶けたままの層が形成されると考えられています。特に、スーパーアースは地球よりも内部が高温・高圧であるため、マントル最深部のマグマオーシャンが数十億年にわたって維持される可能性があります。

研究チームが注目したのは、「基底マグマオーシャンが電気を通すのかどうか」という点です。ダイナモ作用によって磁場が発生するためには、流体が対流するだけでなく、その流体が電気を通す性質(電気伝導性)を持っている必要があるからです。

高出力レーザーで惑星深部を再現

スーパーアース深部の極限環境における岩石の性質を調べるため、研究チームはロチェスター大学レーザーエネルギー研究所の「OMEGA EPレーザー」を使用した衝撃圧縮実験を行いました。

実験では、マントルを構成する主な物質のひとつである酸化マグネシウム(MgO)と、それに鉄を含ませたフェロペリクレース((Mg,Fe)O)という鉱物に、高出力レーザーを照射。スーパーアースの内部に匹敵する、数百万気圧・数千℃という超高圧・高温状態を一瞬にして作り出しました。

実験の結果、これらの岩石が溶融状態になると、電気伝導率が飛躍的に高まることが確認されました。

特筆すべきは、鉄の含有量に関わらず、溶けた酸化マグネシウム自体が高い電気伝導性を示したことです。これは、鉄が電気伝導率を大きく増加させるだろうという従来の予想を覆す発見でした。測定された電気伝導率は、地球の磁場を生み出すための条件を十分に満たしており、さらに巨大なスーパーアースの規模であれば、より強力な磁場を生成できる可能性が示唆されました。

地球のダイナモ作用を上回る強力なシールドが存在?

実験データをもとに行われたシミュレーションによると、地球の3倍から6倍の質量を持つスーパーアースでは、地球の外核が生み出すものよりも強力な磁場を基底マグマオーシャンが生み出し得ることがわかりました。

さらに、この磁場は数十億年という長い期間にわたって持続する可能性があります。つまり、スーパーアースの核が磁場を作れない状態だとしても、その上の基底マグマオーシャンによるダイナモ作用が磁場を作り出し、惑星全体を放射線から守るシールドを提供している可能性があるのです。

中島さんは、「磁場は惑星の生命居住可能性にとって非常に重要ですが、太陽系の金星や火星には地球のような内部ダイナモが存在しません。しかし、スーパーアースであれば、核だけでなくマグマでもダイナモが発生し、居住可能性を高めている可能性があります」と述べています。

惑星探査の新たな視点

今回の発見は、太陽系外惑星の内部構造や進化に関する従来の理解を大きく変える可能性があります。人類がまだ見ぬスーパーアースの空には、強力な磁場によって守られた大気が存在し、ひょっとしたらオーロラが輝いているかもしれません。

研究チームは今後、実際に観測によって太陽系外惑星の磁場を検出することで、この仮説の検証を目指しているということです。

脚注

※1…スーパーアース(Super-Earth):質量が地球よりも大きくて天王星や海王星よりも小さく、主に岩石や金属でできていると考えられている惑星の総称。

※2…ダイナモ作用(Dynamo Theory):天体の内部で導電性のある流体(液体金属やプラズマなど)が対流・回転することで電流が生じ、それによって磁場が維持されるメカニズム。

※3…基底マグマオーシャン(Basal Magma Ocean: BMO):マントルの最下部、コアとの境界付近に存在すると考えられる、部分的あるいは完全に溶融した岩石の層。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典