こちらは、約112光年先の恒星「りゅう座EK星(EK Draconis)」のイメージ図。
太陽に似た恒星で発生した、“高温かつ高速”と“低温かつ低速”の、2タイプのガス噴出(質量放出)が発生した様子を描いています。

ハッブル宇宙望遠鏡と日韓の地上望遠鏡3つで同時観測を実施
京都大学の行方宏介特定助教を筆頭とする国際研究チームは、宇宙と地上の4つの望遠鏡による同時観測を通じて、りゅう座EK星で発生した巨大な恒星フレアを捉えることに成功したとする研究成果を発表しました。
りゅう座EK星は太陽と同程度の質量を持ちますが、誕生から約1億年という若い恒星です。
研究チームはNASA=アメリカ航空宇宙局のハッブル宇宙望遠鏡(HST)をはじめ、京都大学岡山天文台の「せいめい望遠鏡」、兵庫県立大学西はりま天文台の「なゆた望遠鏡」、韓国のBOAO=普賢山天文台の1.8m望遠鏡を使用して、りゅう座EK星の同時観測を行いました。
その結果、日本時間2024年3月30日に、りゅう座EK星で発生した巨大なフレアの観測に成功。分析の結果、このフレアは1859年9月に発生した観測史上最大の太陽フレア「キャリントン・イベント」に匹敵する規模だったことが明らかになりました。
今回の観測体制では、ハッブル宇宙望遠鏡が高温ガスに対応する遠紫外線(波長110~140nm)、地上の3望遠鏡が低温ガスに対応する可視光線(Hα線)の分光観測(※)を実施しました。高温ガスは約10万℃、低温ガスでも約1万℃に達するとされていて、あくまでも相対的な意味での“高温・低温”です。
※…電磁波の波長ごとの強さの分布であるスペクトルを得る観測手法。




今回観測されたフレアでは、まず毎秒300~550kmという高速で噴出する高温ガスを検出。その10分ほど後に、今度は毎秒70kmの速度で移動する低温ガスが検出されました。高温・高速および低温・低速という2タイプの噴出現象が、同じフレアでほぼ同時に発生していたことになります。
研究チームによると、このような多温度・多速度での噴出現象は、太陽で発生するコロナ質量放出(CME)ではすでに知られていました。京都大学などによれば、これとよく似た現象の存在が太陽以外の恒星で観測的に裏付けられたのは初めてだとされています。
また、紫外線で捉えられた高温・高速のガスは、可視光線で捉えられた低温・低速のガスに比べて、10倍以上大きな運動エネルギーを持つものでした。これまでにも可視光線による低温ガスの噴出は観測されていましたが、恒星を周回する惑星に対しては、高温ガスのほうがより大きな影響を与えることが示唆されます。
誕生から約46億年が経った太陽も、若い頃は今よりもずっと活動的だったと考えられています。高い頻度で発生した大規模な太陽フレアや質量放出が初期の地球や火星などの大気に及ぼした影響は、惑星の進化や生命の誕生を理解する上で重要な鍵を握ります。
今回の研究成果は、現在の太陽の観測にもとづいたフレアや質量放出といった現象のモデルが、若い頃の太陽に似ていると考えられているりゅう座EK星のような星にも適応できることを示すものとなりました。
今後はX線や電波といったさらに異なる波長を捉える望遠鏡や、次世代の宇宙望遠鏡も加えた共同観測を行うことで、初期の惑星の大気や生命が誕生し得る環境に対してフレアが及ぼす影響を明らかにしていきたいということです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- 国立天文台 - 若い惑星環境を揺るがす巨⼤フレアからの多温度のガス噴出―ハッブル宇宙望遠鏡と⽇韓地上望遠鏡で同時に検出―
- 京都大学 - 若い惑星環境を揺るがす巨大フレアの多温度噴出現象―ハッブル宇宙望遠鏡と日韓地上望遠鏡で同時検出―

























