【▲「TRAPPIST-1(トラピスト1)」星系(上)と火星軌道までの太陽系(下)の比較図。上図のスケールは下図の25倍に拡大されていて、「TRAPPIST-1」星系の最も外側の惑星「TRAPPIST-1 h」の軌道でさえ、太陽系の水星軌道のずっと内側を公転しているのがわかります(Credit:NASA/JPL-Caltech)】

恒星の表面で発生する爆発現象「恒星フレア」と、それに伴って発生することが多い「コロナ質量放出(CME:Coronal Mass Ejectionが、恒星を周回する惑星の内部加熱に影響を与えている可能性を指摘する研究成果が発表されました。

研究の対象となったのは、地球から約40光年の距離にあるTRAPPIST-1(トラピスト1)」星系です。TRAPPIST-1は、質量が太陽の12分の1という小さな恒星(赤色矮星)で、その周囲を地球のような岩石でできている可能性のある惑星(岩石惑星)が少なくとも7つ公転しています。

TRAPPIST-1は太陽よりもはるかに小さいため、惑星系のスケールも太陽系よりはるかに小さくなっています。最も外側の惑星「TRAPPIST-1 h」の軌道でさえ、太陽系の水星軌道のずっと内側を公転しています。

恒星「TRAPPIST-1」(左端)を公転する7つの系外惑星(b~h)を示した図(Credit: NASA/JPL-Caltech)
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【▲ 恒星「TRAPPIST-1」(左端)を公転する7つの系外惑星(b~h)を示した図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

それでは、この研究は「TRAPPIST-1」星系の惑星が持つ居住可能性を理解する上で、どのように役立つのでしょうか。

まず、私たちが住んでいる太陽系と地球に置き換えて考えてみると、太陽フレアが地球内部の地質活動に影響を及ぼしている可能性があることになります。近年、太陽フレアが注目を集めているのは、太陽活動が通信障害や大規模な停電を引き起こす可能性が指摘されているからです。しかし、太陽フレアなどの現象が与える影響や相互作用は、地球大気とそのすぐ傍の宇宙環境に限られていると考えられてきました。

The Astrophysical Journal Letters」誌に掲載された論文の共著者である、ベルン大学の地球物理学者ダン・バウワー(Dan Bower)博士は、「地球をこの研究の出発点とすると、地質活動は惑星の表面全体を形成しており、最終的に惑星の冷却によって引き起こされています」と語っています。つまり、地質活動には加熱と冷却のプロセスが必要だということです。

さらに加えて、「地球の内部には放射性元素が存在していて、それが熱を発生させることで、45億年を超える地質学的プロセスの持続を可能にしています。しかし、すべての惑星で生命の進化に必要な地質学的プロセスが確立されるために、放射性元素は必要なのかどうかという疑問が生じます」と述べています。

また、他にも惑星内部で熱を発生させるプロセスはあるものの、短命であったり、特殊な環境を必要としたりするため、惑星の地質活動や居住可能な環境は希なのかもしれないという仮説を前進させることになると言います。

さて、この研究を興味深いものにしているのは、TRAPPIST-1M型星とも呼ばれる「赤色矮星」であり、太陽よりもずっと小さく、放射も太陽と比べてずっと少ないということです。赤色矮星は、太陽系の近傍では最も一般的な恒星でもあります。しかし、TRAPPIST-1は、地球サイズの7つの惑星が周回していることが発見されて以来、大きな注目を集めてきました。

本研究では、TRAPPIST-1からの恒星フレアが、周回する惑星の内部熱収支にどのように影響するかを調査しました。特に恒星に最も近い惑星では、恒星フレアからの「抵抗損失(ohmic dissipation)」(※)による内部加熱が重要であり、地質活動を促進する可能性があることを明らかにしました。

※…「抵抗損失」とは、「抵抗に電流を流したとき、熱に変換されることによる電気エネルギーの損失」と定義されます。加熱プロセスの視点からは「ジュール加熱」とも呼ばれます。惑星は恒星フレアが影響を及ぼしている交番磁界(時間と共に大きさと方向が変化を繰り返す磁界)を横切る際に内部で電流が発生し、加熱されます。

apjlaca287f1_lr(Credit:Alexander Grayver et al.)

【▲惑星に対するICME(惑星間のコロナ質量放出)の影響を表わした図。上段は、ICMEが外気圏のみと相互作用し(これまでの研究で考えられていた)、惑星内部が絶縁体として扱われています。下段は、惑星内部は導電性であり、ICMEが運ぶ磁気エネルギーが内部で電流を誘導し、抵抗損失と加熱を引き起こすことを示しています。惑星固有の磁気圏の影響は描かれていません(Credit:Alexander Grayver et al.)】

さらに、このプロセスは長寿命であり、惑星の地表環境が居住可能な状態に進化をさせるなど、地質学的な時間スケールにわたって持続する可能性があります。以前は、恒星フレアが居住性に与える影響は、惑星を覆い保護している大気を剥ぎ取るなど、ほとんどが破壊的であると考えられていました。

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この研究結果は、恒星フレアが居住可能な地表近くの環境の確立を、どのように促進するかを示しており、これまでとは異なる視点を提示していると言います。さらに、固有の磁場を持つ惑星では加熱がさらに強化される可能性を予測しています。

今後は、大気・地球物理学モデルとの整合性を保つために、恒星フレアやCMEが近接した系外惑星の大気に与える影響を、惑星内部への影響と合わせて研究する必要があるとしています。

関連:発表から今年で5年、地球サイズの系外惑星が7つもある恒星「トラピスト1

 

Source

  • Image Credit: NASA/JPL-Caltech、Alexander Grayver et al.
  • UNIVERSE TODAY - Planetary Interiors in TRAPPIST-1 System Could be Affected by Stellar Flares
  • The Astrophysical Journal Letters - Interior Heating of Rocky Exoplanets from Stellar Flares with Application to TRAPPIST-1

文/吉田哲郎

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