若い太陽型星「りゅう座EK星」を描いた想像図。スーパーフレアにともなう巨大なフィラメント噴出が起きている(Credit: 国立天文台)

【▲若い太陽型星「りゅう座EK星」を描いた想像図。スーパーフレアにともなう巨大なフィラメント噴出が起きている(Credit: 国立天文台)】

国立天文台(※)の行方宏介特別研究員を筆頭とする研究グループは、若い太陽型の(太陽に似た)星「りゅう座EK星」(EK Draconis)で発生した強力な爆発現象「スーパーフレア」にともなう巨大なフィラメント(ガスでできた糸状の構造)の噴出を検出することに成功したとする研究成果を発表しました。今回の成果は、若き日の太陽が地球や火星に及ぼした影響を理解する上での糸口になるだけでなく、現在の太陽でスーパーフレアが発生した場合の影響予測や減災にもつながると期待されています。

※…研究当時は京都大学理学研究科博士課程

■史上最大級の太陽フレアと比べて10倍以上のエネルギーや質量が放出されたとみられる

太陽ではフィラメント噴出コロナ質量放出(CME)といった質量放出現象(太陽を構成する物質の一部が放出される現象)が時折発生します。これらは太陽の表面で起きる突発的な爆発現象「フレア」にともなう現象ですが、若い太陽型星では、これまでに知られている最大級の太陽フレアと比べて10倍以上ものエネルギーが放出される「スーパーフレア」が発生すると推測されているといいます。スーパーフレアは若い頃の太陽でも発生したとみられています。

行方さんたちは今回、京都大学岡山天文台の「せいめい望遠鏡」(口径3.8m)と兵庫県立大学西はりま天文台の「なゆた望遠鏡」(口径2.0m)を使用し、年齢が5000万~1億2500万歳と推定される「りゅう座EK星」の分光観測(波長ごとの電磁波の強さを捉える観測手法)を行いました。その結果、2020年4月5日に「りゅう座EK星」のスーパーフレアにともなう増光を捉えることに成功しました。可視光線における太陽型星のスーパーフレアの分光観測成功は今回が初めてのことだといいます。

また、研究グループが観測データを分析したところ、摂氏約1万度の物質が運動する様子も捉えられていたといいます。この様子は太陽におけるフィラメント噴出と非常によく似ていることから、観測された「りゅう座EK星」のスーパーフレアが巨大なフィラメント噴出をともなうものだったことも判明しました。研究グループによると、太陽型星のスーパーフレアにともなうフィラメント噴出の発見は今回が初めてだといいます。フィラメントの質量は太陽における史上最大規模の質量放出現象と比べて10倍以上で、秒速約500kmで噴出したことも明らかになったといいます。

行方さんたちはこれまでにも「せいめい望遠鏡」を使った観測を行っていて、2020年には太陽よりも軽い赤色矮星「しし座AD星」(AD Leonis)で発生したスーパーフレアの検出を発表しています。このとき放出されたエネルギーは最大級の太陽フレアと比べて20倍ほど大きかったとみられており、次は太陽型星のスーパーフレア検出を実現したいとする目標が掲げられていました。

関連:太陽フレア最強クラスの20倍。赤色矮星のスーパーフレアが検出される

京都大学岡山天文台の「せいめい望遠鏡」(Credit: 京都大学)

【▲京都大学岡山天文台の「せいめい望遠鏡」(Credit: 京都大学)】

その目標を実現した今回の成果は、スーパーフレアが若い惑星(若い頃の地球や火星を含む)の大気や生命の居住可能性へ及ぼす影響についての議論を前進させると期待されていますが、現実のリスクとしてのスーパーフレアを論じる上でも貢献することになるかもしれません。

太陽フレアは時に人類の脅威となり得ます。地球に向かって発生したフィラメント噴出やコロナ質量放出は地球環境にも大きな影響を及ぼすことがあり、通信障害や人工衛星の故障といった被害が生じる可能性があるからです。たとえば、1859年9月に発生した「キャリントン・イベント」とも呼ばれる大規模な太陽フレアは当時欧米で普及していた電信網に被害をもたらしましたし、1989年3月に発生したコロナ質量放出はカナダで大規模な停電を引き起こしました。

ところが近年、現在の太陽でもごくまれにスーパーフレアが発生する可能性が指摘されています。キャリントン・イベントが発生した19世紀以降、人類は電気を大いに活用してきました。もしもいまスーパーフレアが発生すれば、世界中に張り巡らされた電力網・通信網や、測位・気象予報を支える人工衛星などが被害を受けることで、人類社会に甚大な影響が及ぶ可能性があるのです。

今回の発表でも言及されていますが、まれにしか発生しないとされる自然現象とも無縁ではないことを、私たちは東日本大震災で経験しました。今回「りゅう座EK星」で観測されたスーパーフレアをもとに地球環境に対する影響を見積もることができれば、太陽で発生し得るスーパーフレアに関して減災面で貢献できると研究グループは期待を寄せています。

発表によると、現在の太陽でスーパーフレアが発生する頻度は数百年に1回とされているものの、フィラメント噴出の発生頻度には星の質量や自転速度が大きく影響する可能性があるといいます。研究グループでは、フィラメント噴出の発生頻度を調べることで惑星の大気進化に及ぼす影響を明らかにしたり、現代社会にもたらされる被害の予測や減災につなげるために、今後も観測を継続するとしています。

 

Image Credit: 国立天文台
Source: 国立天文台 / 京都大学
文/松村武宏

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