ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“みずがめ座”の共生星「みずがめ座R星」

こちらは「みずがめ座(水瓶座)」の方向約710光年先の「みずがめ座R星(R Aquarii)」です。中央で明るく輝く星、その周囲では上下左右に二重の弧を描いた星雲が広がる複雑な構造が形成されています。

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広視野カメラ3(WFC3)で撮影された「みずがめ座R星(R Aquarii)」
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広視野カメラ3(WFC3)で撮影された「みずがめ座R星(R Aquarii)」(Credit: NASA, ESA, M. Stute, M. Karovska, D. de Martin & M. Zamani (ESA/Hubble))】

みずがめ座R星は赤色巨星と白色矮星からなる「共生星」

みずがめ座R星は巨大な赤色巨星とコンパクトで高密度な白色矮星からなる連星の一種「共生星」として知られています。

欧州宇宙機関(ESA)によると、赤色巨星のほうは約390日周期で明るさが750倍も変化する変光星(ミラ型変光星)で、直径は太陽の400倍以上に膨張しており、最も明るい時には太陽の5000倍もの輝きを放ちます。赤色巨星と白色矮星は約44年周期で公転し合っていて、互いに最も接近する時には赤色巨星の水素ガスが白色矮星へと吸い取られるように移動すると考えられています。ガスは白色矮星の周囲に降着円盤を形成する形で蓄積し、特に赤色巨星と白色矮星が最接近する頃には強力な爆発現象とジェットの放出が起こるとされています。みずがめ座R星を取り囲む複雑な構造の星雲も、過去に起きた新星(※)で生じた残骸ではないかと考えられています。

※…白色矮星と恒星の連星で起こる爆発現象、古典新星。恒星から流れ出て白色矮星の表面に降り積もったガスが暴走的な熱核反応に至ることで発生すると考えられている。爆発は繰り返されることがあり、同じ連星で繰り返し観測された場合は再帰新星や回帰新星と呼ばれる。

この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」で取得したデータをもとに作成されました。ハッブル宇宙望遠鏡によるみずがめ座R星の観測は継続的に行われています。2014年から2023年にかけての観測データを使ったタイムラプスも作成されていて、明るさを変えるみずがめ座R星や、過去に放出された物質との相互作用によって螺旋状に広がっていく星雲の中心構造の様子が捉えられています。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が2014年から2023年にかけて観測した「みずがめ座R星」のタイムラプス】
(Credit: NASA, ESA, M. Stute, M. Karovska, D. de Martin & M. Zamani (ESA/Hubble), N. Bartmann (ESA/Hubble))

冒頭の画像はESAから2024年10月16日付で公開されています。

 

Source

  • ESA/Hubble - Hubble captures intricacies of R Aquarii

文・編集/sorae編集部

#ハッブル宇宙望遠鏡 #共生星 #みずがめ座R星