彗星の尾のように伸びた探査機衝突時の噴出物を撮影 NASA小惑星軌道変更ミッション「DART」
【▲ セロ・トロロ汎米天文台のSOAR望遠鏡でDART探査機の衝突2日後に撮影された、ディモルフォスからの噴出物の様子(Credit: CTIO/NOIRLab/SOAR/NSF/AURA/T. Kareta (Lowell Observatory), M. Knight (US Naval Academy); Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab))】
【▲ セロ・トロロ汎米天文台のSOAR望遠鏡でDART探査機の衝突2日後に撮影された、ディモルフォスからの噴出物の様子(Credit: CTIO/NOIRLab/SOAR/NSF/AURA/T. Kareta (Lowell Observatory), M. Knight (US Naval Academy); Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab))】
【▲ セロ・トロロ汎米天文台のSOAR望遠鏡でDART探査機の衝突2日後に撮影された、ディモルフォスからの噴出物の様子(Credit: CTIO/NOIRLab/SOAR/NSF/AURA/T. Kareta (Lowell Observatory), M. Knight (US Naval Academy); Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab))】

細く長い尾を引いたこちらの天体、その正体は彗星ではありません。セロ・トロロ汎米天文台(チリ)の「SOAR望遠鏡」で撮影されたこの天体は、小惑星「ディディモス」(65803 Didymos、直径780m)とその衛星「ディモルフォス」(Dimorphos、直径160m)からなる二重小惑星です。

ディモルフォスには日本時間2022年9月27日8時14分、アメリカ航空宇宙局(NASA)の「DART」ミッションの探査機が衝突することに成功しました。画像を公開した米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、この画像はDART探査機の衝突から2日後に撮影されたもので、ディモルフォスから放出された噴出物(イジェクタ)が太陽光の放射圧を受けて、彗星の尾に似た長さ1万km以上に渡るダストトレイルを形成している様子が捉えられています。

ある小惑星が地球に衝突する確率が高いと判断された場合、事前に衝突体(インパクター)を体当たりさせて小惑星の軌道を変えることで、甚大な被害をもたらす小惑星の衝突を回避できるかもしれません。DART(Double Asteroid Redirection Test、二重小惑星方向転換試験の略)は惑星防衛(プラネタリーディフェンス※)の一環として、「キネティックインパクト」(kinetic impact)と呼ばれるこの手法を初めて実証するミッションです(詳しくは以下の関連記事をご覧下さい)。

関連:「DART」探査機が小惑星への衝突に成功! NASA小惑星軌道変更ミッション

※…深刻な被害をもたらす天体衝突を事前に予測し、将来的には小惑星などの軌道を変えて災害を未然に防ぐための取り組みのこと。

観測を行ったのはローウェル天文台の天文学者Teddy Kareta博士と、アメリカ海軍兵学校のMatthew Knight准教授でした。Knightさんによると、SOAR望遠鏡を使ったディモルフォスの噴出物の観測は、今度数週間から数か月間に渡って続けられる予定です。

NOIRLabによると、地上からの観測を通してディモルフォス表面の性質や、DART探査機の衝突によって放出された噴出物の量や速度、拡大する塵の雲の粒子サイズ(衝突によって大きな瓦礫は飛ばされたか、それとも細かな塵が大半を占めるのか)に関する知識が得られると期待されています。得られたデータを分析して、衝突にともなう噴出物の量や性質、小惑星の軌道がどのようにして変更されるのかをより良く理解することは、科学者が地球を守る上で役立つとのことです。

冒頭の画像はNOIRLabから2022年10月3日付で公開されています。

 

関連:宇宙と地上で観測された衝突の瞬間 NASA小惑星軌道変更ミッション「DART」

Source

  • Image Credit: CTIO/NOIRLab/SOAR/NSF/AURA/T. Kareta (Lowell Observatory), M. Knight (US Naval Academy); Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab)
  • NOIRLab - SOAR Telescope Catches Dimorphos’s Expanding Comet-like Tail After DART Impact

文/松村武宏

最終更新日:2022/10/08