アポロ11号から撮影された地球(Credit: NASA)

【▲ アポロ11号から撮影された地球(Credit: NASA)】

中生代白亜紀のある時期に地球の表面が自転軸に対して回転し、そして元に戻そうとする力が働いたかのように揺り戻された。そんな可能性を示す研究成果が学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されています。中国科学院地質・地球物理研究所のRoss Mitchellさん、東京工業大学地球生命研究所/カリフォルニア工科大学のJoe Kirschvinkさんなどが参加した国際研究グループによれば、当時の地球表面は自転軸に対して最大で約12度回転した可能性があるようです。

■地球表面が800万年の間に約24度回転した可能性、古地磁気データの分析結果が示す

地球の表面と自転軸が交わる場所は北極点および南極点と呼ばれていますが、これらの位置は不変ではなく、地質学的な長い時間をかけて少しずつ移動しています。実際には地球の表面が回転することで生じるこの現象は「真の極移動(true polar wander)」と呼ばれていて、液体の外核を取り囲む固体の地殻やマントルにおける重量バランスが変化することで生じると考えられています(※)。

真の極移動で動くのは地殻やマントルであって自転軸の傾きは変わりませんが、地表に住む私たちからすれば極点が移動しているように見えるというわけです。研究グループによると、過去の地球では大規模な真の極移動が度々起きていた可能性がこれまでの研究で示されていて、研究者の間で数十年に渡って議論が交わされてきたといいます。

※…より短期間の現象では極点の位置が直径十数m程度の円を描くように地球表面が回転する「極運動(polar motion)」が知られています。極運動は地球表面・大気の季節変化や約430日周期の変化(チャンドラー揺動)などが合わさった複雑な動きを示します(参考:Wikipedia

真の極移動の解説図。自転軸の傾きは変化せずに地球表面が回転するため(図の左→右)、場所によっては緯度が大きく変わることになる(Credit: USGS, Wikimedia Commons)

【▲ 真の極移動の解説図。自転軸の傾きは変化せずに地球表面が回転するため(図の左→右)、場所によっては緯度が大きく変わることになる(Credit: USGS, Wikimedia Commons)】

研究グループは今回、約8400万年前の白亜紀後期に発生した可能性がある真の極移動を詳しく調べるために、イタリアにある白亜紀の石灰岩層から得られた古地磁気のデータを分析しました。1000万年間隔の分解能で行われる一般的な古地磁気の研究であれば100のサンプルを集めるところ、研究グループは100万年間隔での高分解能の分析を行うために1桁多い1000以上のサンプルを集めたといいます。

研究グループによると、今までの研究では過去1億年以内に起きた真の極移動は特定されていなかったものの、今回の分析結果は約8400万年前に真の極移動が起きたことを明確に示していたといいます。冒頭でも触れたように、当時の地球表面は自転軸に対して約12度回転した可能性があるようです。東京工業大学は今回の成果について、過去に地球表面の回転が実際に起きたことを示す、これまでで最も説得力がある証拠を提示するものだとしています。

また、当時の古地磁気データは極点が「往復」するように移動した、つまり回転した地球表面が元に戻るように逆方向へ回転したことを示しているといいます。研究グループによれば、地球表面は約8600~7800万年前にかけての800万年間に合計で約24度、100万年あたり約3度のペースで回転したことが考えられるようです。現在の下部マントルの粘性率から算出された真の極移動のペースは100万年あたり約2.4度が上限だと推定されているといい、研究グループは当時のマントルの状態が現在とは異なっていたことが示唆されている可能性(より高温で粘性率が低かったなど)に言及しています。

 

関連:地球のコアには大量の水素が取り込まれている? 長年の謎に迫る研究成果

■この記事は、Apple Podcast科学カテゴリー1位達成の「佐々木亮の宇宙ばなし」で音声解説を視聴することができます。

Image Credit: NASA
Source: 東京工業大学 / 論文
文/松村武宏

 オススメ関連記事