日本時間2020年8月16日13時8分、その約6時間後に発見されることになる小惑星「2020 QG」が、インド洋南部の上空を通過していきました。最接近時の高度は2950kmとされています。カリフォルニア工科大学の発表によると、この高度は2011年に発見された小惑星「2011 CQ1」より約2500km低く、地球に近づいたことが知られている小惑星の最接近記録を更新したといいます。
■大きさは3~6m、静止衛星よりも3万km以上低い高度を通過
小惑星「2020 QG」はパロマー天文台に設置されているカリフォルニア工科大学の光学観測装置「ZTF(Zwicky Transient Facility)」によって地球への最接近後に検出されました。大きさは3~6mと推定されており、仮に地球へ衝突する軌道に乗っていたとしても大気圏で破壊されたとみられています。高度2950kmといえば静止気象衛星「ひまわり」(高度約3万5800km)の軌道よりも3万km以上低く、国際宇宙ステーション(ISS)をはじめとした地球低軌道(JAXAによると高度2000km以下)を周回する人工物のほうが近い高度です。
また、別の惑星や小惑星を目指す探査機が軌道を変更するために地球などの重力を利用したスイングバイを行うことがありますが、2020 QGの軌道も地球に接近したことで変化したとみられています。Paul Chodas 氏(JPL:ジェット推進研究所、NASA)は「計算によると、小惑星の移動方向は地球に接近したことで45度ほど向きが変わりました」と語ります。
ZTFはパロマー天文台のサミュエル・オスキン望遠鏡に設置されており、超新星爆発のような突発的な天文現象や未発見の小惑星などの検出を目指して3夜ごとに北天の空全体を観測しています。カリフォルニア工科大学によると、ZTFによって撮影された大量の画像は自動的に分類され、毎日およそ1000点の画像がチームメンバーや学生によってチェックされているといいます。今回通過していった2020 QGは、インド工科大学ボンベイ校の学生Kunal Deshmukh氏によって識別されました。
ZTFのチームメンバーBryce Bolin氏(カリフォルニア工科大学)は「今回の発見は、地球に衝突しかねない軌道を周回する天体の検出にZTFが役立つことを実証するものです」とコメントしています。
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL / Calteck / JPL Small-Body Database
文/松村武宏