地球の空が青く、夕焼けが赤く見えるのは、地球の大気を構成する分子が太陽光を散乱させるためです。いっぽう火星の場合は大気中に舞い上がった細かな塵が光を散乱させるため、昼間の空は赤っぽく、夕方は太陽の近くが青っぽく見えるという、地球とは逆の色合いになります。

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【▲ 2005年5月にスピリットが撮影したグセフ・クレーターの夕暮れ(Credit: NASA/JPL/Texas A&M/Cornell)】

今から15年前の2005年5月19日、当時火星のグセフ・クレーターで探査を行っていたNASAの火星探査車「スピリット」によって、火星の夕暮れ時の空が撮影されています。地球よりも火星のほうが太陽から遠いため、太陽の見かけの大きさは地球から見た場合の3分の2ほどになっています。

画像は3つの波長(750nm、530nm、430nm)で撮影されたデータを合成したもので、色は人間の目で見た場合よりも強調されています。クレーターの縁に沈みつつある太陽の近くは薄い青ですが、その周りには赤みがかった暗い空が広がっています。このような夕方や朝方に撮影された空の写真は、塵がどのくらいの高さにまで広がっているのかを調べたり、雲を探したりするために活用されるため、現在活動中の火星探査車「キュリオシティ」など他の探査機でも撮影されています。

空高くまで広がった塵が夜の側にも太陽光を散乱させるため、火星の朝方や夕方は長い時間をかけてゆっくりと明るさが変わっていくといいます。現在NASAは2024年の有人月面探査再開を目指す「アルテミス計画」を進めていますが、さらにその先、2030年代以降の有人火星探査の実施についても検討しています。そう遠くない将来、火星の長く青い夕暮れを人間がその目で見る日がやってくるかもしれません。

2015年4月にキュリオシティが撮影したゲール・クレーターの夕暮れ(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS/Texas A&M Univ.)

 

Source

  • Image Credit: NASA/JPL/Texas A&M/Cornell
  • NASA/JPL - A Moment Frozen in Time

文/松村武宏

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