私たちが住む天の川銀河の中心部分には、1立方光年(一辺が1光年の立方体)あたり1000から10万の恒星が密集して存在しています。その大半が80億年以上前に誕生した古い星であり、10億年ほど前まで星があまり形成されない時期があったとする研究成果が発表されました。

■中心領域にある星の8割が80億年以上前のスターバーストで形成されていた

パラナル天文台の超大型望遠鏡(VLT)によって赤外線で観測された天の川銀河の中心付近。近赤外線の3つの波長(1250nm、1635nm、2150nm)にそれぞれ青、緑、赤を割り当てて着色したもの(Credit: ESO/Nogueras-Lara et al.)

今回、Francisco Nogueras-Lara氏(マックス・プランク天文学研究所、研究当時はアンダルシア天体物理学研究所)らの研究チームは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)に所属するパラナル天文台(チリ)の「超大型望遠鏡(VLT)」に設置された赤外線観測装置「HAWK-I」を使って、天の川銀河の中心付近、直径1000光年の範囲に観測される星々の年齢を調べました。

分析の結果、天の川銀河の中心領域にある恒星の80%以上が、およそ135億年前から80億年前に起きたスターバーストで形成された古い星々であることが判明しました。この時期には太陽の重さにして毎年100個分の恒星が誕生するかたわらで、「10万回以上の超新星爆発がもたらされたはずだ」とNogueras-Lara氏は語ります。

いっぽう、残る恒星の一部は、およそ10億年前から1億年前ほどの間に起きた小規模なスターバーストによって形成されたとみられています。つまり、天の川銀河の中心領域にある恒星は、「80億歳以上の多数派」と「10億歳未満の少数派」に分かれていることになります。

多数派と少数派の星々がそれぞれ誕生した時期の間には60~70億年ほどのギャップがありますが、この期間は星があまり生み出されない停滞期だったものとみられています。太陽系はおよそ46億年前に誕生したと考えられていますが、その頃の天の川銀河の中心付近は、2つのスターバーストにはさまれた穏やかな時期を迎えていたことになります。

■天の川銀河中心付近の歴史に再考を迫るか?

天の川銀河の想像図。今回研究されたのは中心付近の直径1000光年ほどの狭い範囲(円盤部全体の直径の1%)に観測される恒星。中心の右上から左下にかけて棒状の構造が伸びている様子も描かれている(Credit: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (SSC/Caltech))

これまでの研究では、天の川銀河の中心領域にある恒星は数十億年かけて徐々に形成されたと考えられてきました。天の川銀河の中心には太陽400万個分の重さを持つ超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」の存在が確実視されていますが、いて座A*も銀河中心の星形成と足並みをそろえるように、徐々に成長してきたものと思われていました。

ところが、今回の観測結果は、およそ80億年前から10億年前までの間に星形成が停滞した時期があったことを示唆しています。このことから、いて座A*は80億年前にはすでに現在と同程度の質量に達するほどの急成長を遂げていた可能性が出てきました。

また、棒渦巻銀河に分類される天の川銀河の中心付近には、渦巻腕(銀河の円盤部にある恒星の集まり)をつなぐようにした棒状の構造が存在するとみられています。このような棒状の構造は、銀河の中心付近へと効率的にガスを送り込む役割を果たしていると考えられてきました。

しかし、数十億年に渡る星形成の停滞期を明らかにした今回の観測結果は、棒状の構造が「(天の川銀河では)最近出現したか、従来考えられていたほどガスを送り込む役割を果たしていないかのどちらか」(Nogueras-Lara氏)を示唆するといいます。

銀河の円盤部に位置する地球から銀河の中心方向を観測しようとすると、円盤部に存在するが妨げとなります。塵は可視光線(人の目に見える光)を遮りますが、赤外線などを利用することで、塵を見通して中心方向を観測することが可能となります。

6万平方光年の範囲にある300万個の恒星を赤外線によって観測することで得られた今回の研究成果は、天の川銀河の中心付近がどのような歴史をたどってきたのか、その再考を迫るものとなりそうです。

 

Image Credit: ESO/Nogueras-Lara et al.
Source: ESO / MPIA
文/松村武宏

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