東京大学木曽観測所は2019年3月20日、同観測所の105cmシュミット望遠鏡に取り付けられた超広視野CMOSカメラ「Tomo-e Gozen(トモエゴゼン)」を用いた観測により、地球接近小惑星「2019 FA」を発見したと発表しました。

こちらの画像の中央、緑色の円で囲まれた部分に弱々しく写っているのが「トモエゴゼン」によって撮影された2019 FA地球に最も近付いた時の距離は月よりも近い22万kmで、直径は約8m(アルベド(反射率)を0.1と仮定した場合)と推定されています。

今から6年前の2013年2月15日、ロシアのチェリャビンスク周辺に被害をもたらした隕石の落下をご記憶でしょうか。最近も、2018年12月19日にベーリング海へ隕石が落下する様子を日本の静止気象衛星「ひまわり8号」やNASAの地球観測衛星「テラ」が捉えていたと相次いで報じられました。地球接近小惑星の観測は、学術的な目的だけでなく、このような天体衝突という直接的な脅威に備えるための取り組みでもあります。

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今回小惑星を発見した「トモエゴゼン」は、直径9度(満月の見かけの直径の18倍)という広い視野を持つ望遠鏡と組み合わせることで、高速で移動する小惑星や流星、突然明るさを増す超新星など、わずかな時間で変化する現象を捉えるために開発が進められている観測装置です。

こちらは105cmシュミット望遠鏡に取り付けられた「トモエゴゼン」のCMOSセンサー群を撮影した写真。完成すれば合計84個のセンサーが並ぶ「トモエゴゼン」ですが、現在は4分の3にあたる63個が稼働しています。

今回発見された2019 FAは、まだ完全には出来上がっていない「トモエゴゼン」によるたった1夜分の観測データから見つかりました。木曽観測所では「トモエゴゼン」による観測を年間100夜程度実施するとしており、単純計算で同様の天体が1年に100個見つかることも期待されています。

現在、直径10mサイズの地球接近小惑星は年間に10個程度発見されています。「トモエゴゼン」が本格稼働すれば、危険をはらんだ天体の数が一気に増えることになるかもしれません。

Image credit: 東京大学木曽観測所
http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/NEWS/2019FA/2019FA.html
文/松村武宏

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