三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月19日、宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機(HTV5)を搭載した、H-IIBロケットの打ち上げに成功した。「こうのとり」には国際宇宙ステーション(ISS)に補給するための物資が搭載されており、このあと軌道修正をしつつ飛行を続け、8月24日にISSに到着する予定となっている。

ロケットは日本標準時2015年8月19日20時50分49秒、鹿児島県種子島にある種子島宇宙センターの吉信第2射点から離昇した。ロケットは順調に飛行を続け、打ち上げから15分後に「こうのとり」を分離し、予定通りの軌道に投入した。

「こうのとり」(HTV)は、ISSに水や食料品、生活用品、そして実験機器やISSの予備部品などの物資を輸送することを目的として、宇宙開発事業団(NASDA、現在のJAXA)と三菱重工によって開発された無人の補給船である。

打ち上げ時の質量は約16.5トンで、最大で約6トンの物資を搭載することが可能となっている。「こうのとり」の大きな特徴として、1気圧に保たれた与圧部と、宇宙空間に曝け出された非与圧部の、2か所の異なる貨物の搭載区画を持っており、与圧部には飲料水や食料品、日用品や実験パレットを、非与圧部にはISSの船外に設置される部品や観測機器などを搭載することできるようになっている。

今回の5号機には合計で5.5トンの物資が搭載されており、そのおよそ3分の1が飲料水や食料品、もう3分の1がISSで使われている部品の補給品、そして残りの3分の1を実験機器が占めている。

実験機器の中には、12匹のマウスを飼育できる「小動物飼育装置」、高エネルギー粒子のの発生源や暗黒物質の正体に迫ることを目指す高エネルギー電子・ガンマ線観測装置「キャレット」(CALET)、そして国内外の超小型衛星などが含まれている。

このあと「こうのとり」5号機は、計4回の軌道修正を行いISSに接近。8月24日の19時55分頃に、ISSのロボット・アームによって把持(キャプチャー)される予定となっている。その後、ISSの「ハーモニー」モジュールに結合され、物資の搬出作業が行われる。

ロボット・アームで捕まえる役目は、現在ISSに滞在中の油井亀美也宇宙飛行士が務める。またその際、米航空宇宙局(NASA)のジョンスン宇宙センターでは、若田光一宇宙飛行士が通信担当(CAPCOM、キャプコム)を務め、油井飛行士のサポートを行うことになっている。

「こうのとり」5号機は物資の搬出作業などが行われた後、ISSで発生したゴミや、不要になった実験機器などを搭載し、9月下旬にISSから離脱。その翌日に大気圏に再突入して燃え尽き、ミッションを終える予定となっている。

一方、「こうのとり」5号機とともに軌道に乗ったH-IIBの第2段機体は、このあと地球を約1周した後、逆噴射し、南太平洋上への制御落下が行われる。これは機体を早期に落下させることにより、他の衛星に影響を与えないようにするための処置で、H-IIBの2号機から実施されており、すべて成功している。