三菱重工業は5月22日、愛知県にある同社飛島工場で、組み立て中の「H-IIB」ロケット5号機の機体を公開した。このあと船で種子島宇宙センターへ運ばれ、今年の夏ごろに「こうのとり」5号機を搭載し、国際宇宙ステーションに向けて打ち上げられる予定だ。
H-IIBは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工が開発したロケットで、主に宇宙ステーション補給機「こうのとり(HTV)」を打ち上げるために造られた。当時すでに運用に就いていたH-IIAロケットを基に、より打ち上げ能力を増やすため、第1段ロケット・エンジンを2基装着し、さらにタンクを太くして容積を増やすなどといった改良が加えられている。
1号機は2009年9月11日に打ち上げられ、これまでに4機すべてが成功を収めている。1号機から3号機まではJAXAが運用を担当していたが、4号機からは三菱重工が担当しており、H-IIAと同じ「商業ロケット」として扱われている。
今回公開されたのは、今夏に打ち上げが予定されているH-IIBの5号機の第1段と第2段の機体で、このあと5月29日に船で出荷され、6月1日に鹿児島県の種子島宇宙センターに到着し、そこで最後の組み立てが行われる。なお、固体ロケット・ブースター(SRB-A)や衛星フェアリングは他社が製造していることから、この工場にはなく、種子島宇宙センターで初めて装着される。両者ともすでに宇宙センターに搬入済みとのことだ。
組み立て後、試験を経て、「こうのとり」5号機を載せて打ち上げられる。打ち上げ日はまだ決まっておらず、決定され次第発表するという。
前号機からの改良点としては、すでにH-IIAで実施されているコストダウン策が適用されており、例えば画像圧縮伝送装置の搭載数が、改良によって従来の2個から1個へと少なくなっている。
また、2号機から行われている第2段機体の制御落下も実施される。ロケットの第2段機体は、「こうのとり」を地球周回軌道まで送り届ける都合上、一緒に軌道に乗ることになる。そのため、放っておくと他の衛星に衝突する可能性があり、また人家のある地域の上空で大気圏に再突入すると部品が落下する可能性もある。そこで早期に、なおかつ人家のない太平洋上などに狙って落下させることが望ましい。そこで実施されるのが制御落下だ。
まず「こうのとり」を軌道に送り届け後、地球を1周させ、続いて機体の健全性を確認した上で、地上からの指令でロケット・エンジンに点火して逆噴射する。そして軌道速度を失った第2段は地球の大気圏に再突入し、燃え尽きる。この試みはH-IIBの2号機から実施されており、すべて狙った水域への落下に成功している。
取材協力: 宇宙作家クラブ