2014会計年度予算の発表を目前に控えた5日、米民主党の上院議員ビル・ネルソン氏は自身のウェブサイトの中で、小惑星を捕獲し、地球・月系のラグランジュ2まで持ち帰り、そこへ人を送り込む計画の存在を明かした。

これに先立つこと約1年前、ケック宇宙研究所(Keck Institute for Space Studies)は地球近傍小惑星(NEO, Near Earth Object)を捕獲し、地球の近くまで持ち帰ってくるといったアイディアを提案した。さらに先週、航空・宇宙専門誌アビエーション・ウィーク&スペース・テクノロジーはアメリカ航空宇宙局(NASA)がこの計画を真剣に検討しており、2014年度の予算として約1億ドルを要求していると報じ、またSpace Newsによれば、その約1億ドルのうち2000万ドルが小惑星の発見に、4000万ドルが捕獲用の宇宙機の研究に、そして4500万ドルがその宇宙機に使用する電気推進エンジンの研究に振り分けられると報じていた。

正式発表はまだだが、ネルソン議員の発言は、これらの報道を裏付けるものとなる。
「これはより広い計画に向けた一歩に過ぎません。この計画は、小惑星の採掘、小惑星の地球衝突に備えた進路をそらす手法の確立、そして火星への有人飛行に向けた基盤造りをも兼ね備えています」。ネルソン氏はこのように主張している。

この計画では、まず持ち帰るのに最適な小惑星を見つけ、電気推進を使う無人の宇宙機を飛ばして捕獲、2010年代のうちに地球・月系にある重力平衡点の一つ、地球から見て月の裏側に位置するラグランジュ2へと持ち帰る。そしてNASAが現在開発中の大型ロケット、スペース・ローンチ・システム(SLS)とオリオン有人宇宙船を使い、早ければ2021年にも、この小惑星へ人を送り込む。

オバマ大統領が2010年4月15日に発表した宇宙政策では2025年ごろに小惑星に人を送り込むという目標が設定されているが、この計画が実現すれば、それを4年ほど短縮できることになる。

もともと有人の小惑星探査に対しては、小惑星までの距離と、そこに行くまでに掛かる時間の問題から、本当に実現可能なのか懐疑的な声が多かったが、その小惑星自体を月まで持ってくることで距離と時間の問題は解決できる。また小惑星を採掘を狙う民間企業が登場し、とりわけ先日ロシアのチェリャビンスク州に隕石が落下したことで、アメリカ政府の中でも小惑星の地球衝突に対する危機感が高まったことも、この計画を後押しする原因となっている。

さらに地球・月系のラグランジュ2には以前から宇宙ステーションを建造しようという構想があり、国際宇宙ステーション(ISS)終了後の、次の大型計画の候補としても挙げられていた。

この小惑星捕獲計画が本当に実現したならば、オバマ大統領の宇宙政策を実現させ、また小惑星探査を支持する人、地球・月系のラグランジュ2への飛行を支持する人の双方の要求を満たし、そして何かにつけて非難されることの多いSLSとオリオンも無駄にはならず、さらには将来の人類の本格的な宇宙進出に向けた確かな布石にもなる。

2014年度予算案の詳細は4月10日頃に発表される。

 

■Bill Nelson, U.S. Senator from Florida: Media Release: NASA has plan to capture an asteroid and tow it to the moon