欧州の社は2015年9月11日、欧州の全測位システム「ガリレオ」を構成する衛星2機を搭載した、「ソユーズST-B/フリガートMT」ロケットの打ち上げに成功した。ガリレオ航法衛星の打ち上げは今回で9、10機目となり、また実運用を担う「FOC」シリーズ衛星の打ち上げは5、6機目となった。

ロケットはギアナ時間2015年9月10日23時8分10秒(日本時間2015年9月11日11時8分10秒)、南米仏領ギアナにあるの、射場(ELS)から離昇した。ロケットは順調に飛行し、約9分後にノーズ・モジュール(フリガートMT上段、衛星搭載ディスペンサー、衛星からなる複合体)を分離した。

続いてフリガートMT上段が稼動を始め、約13分間の第1回燃焼を実施。そして約3時間15にわたり慣性飛行(バーバキュー・マニューヴァー)を行った後、約4分間の第2回燃焼を行い、目標の軌道に到達。衛星を分離した。その後、地上からの測定により、衛星が計画通りの軌道に入っていることが確認されている。

現在衛星は、高度2万3522km、軌道傾斜角57.394度の軌道に乗っており、このあと姿勢などを整えた後、運用を行う軌道に乗り移る予定となっている。

ガリレオは欧州が構築を進めている全測位システムで、欧州版GPSとも呼ばれている。今回打ち上げられたのはシステムを構成するための衛星で、「ガリレオFOC-M3 SAT 9」と「ガリレオFOC-M3 SAT 10」と呼ばれている。また、ガリレオFOC-M3 SAT 9は「アルバ」(Alba)、ガリレオFOC-M3 SAT 10には「オリアナ」(Oriana)という愛称も付けられている。

FOCとは「Full Operational Capability」の略で、必要な能力をすべてもつ、本格的な運用に使われる衛星という意味をもっている。ガリレオFOCは最終的に、2017年までに全24機が打ち上げられる予定となっている。

衛星の開発は欧州宇宙機関(ESA)が指揮し、製造はOHBシステム社とサリー・サテライト・テクノロジー社(SSTL)が手掛けた。衛星の寸法は2.5 x 1.2 x 1.1mで、パドル展開時の翼長は14.7m、打ち上げ時の質量は約715kg。設計寿命は12年以上が予定されている。

ガリレオはこれまでに、実験機の「ジョーヴェ」が2機、そして軌道上実証機の「ガリレオIOV(In-Orbit Validation)」が4機打ち上げられ、試験が続けられてきた。

そして2014年8月22日に、ガリレオFOCの1号機と2号機にあたるガリレオFOC M1 SAT 5、6が打ち上げられたが、ロシア製のフリガート上段が問題を起こしたことで計画通りの軌道に投入できなかった。その後、衛星のスラスターを使うことで、当初予定していた軌道ではないものの、限定的ながら運用が可能になる軌道へ移されている。

また2015年3月28日には、ガリレオFOCの3号機と4号機にあたる「ガリレオFOC M2 SAT 7」と「同8」が打ち上げられ、成功している。

打ち上げに使われたソユーズST-Bロケットは、ロシアのソユーズUやソユーズFGの後継機として開発されたソユーズ2ロケット・シリーズのひとつである「ソユーズ2.1b」を、社が購入し、運用している機体である。

ソユーズ2シリーズはソユーズ2.1aとソユーズ2.1b、そしてソユーズ2.1vの大きく3種類があり、旧型機からエンジンの改良や、制御システムなどの電子機器の全面的な近代化などが施されている。特に後者については、機器の軽量化と、飛行プロファイルの最適化が可能になったこと、打ち上げ能力の向上につながっている。またウクライナなどから買っていた部品を無くし、ロシア製の部品のみで造られている点も大きな特徴として挙げられる。

ソユーズ2.1aの1号機は、2004年11月8日にサブオービタル(軌道に乗らない)飛行での試験を実施。続いて2006年10月19日の2号機で、初の人工衛星を搭載した打ち上げに成功した。以来、ロシアの通信衛星や航法衛星、などの打ち上げに使用されている。ソユーズ2.1aはこれまでに23機が打ち上げられ、2009年に衛星を予定より低い軌道に投入する事故を、また今年4月28日には、搭載していた衛星との相性が悪く、機体が振動を始めて壊れるという事故を起こしている。

ソユーズ2.1bは、ソユーズ2.1aの第3段により高性能なロケット・エンジンを装備して能力を向上させた機体で、2006年から運用に入っている。これまでに26機が打ち上げられているが、2011年には、まさにその新しい第3段エンジンが原因で打ち上げに失敗している。

社が運用するソユーズ2は、ソユーズ2.1aがソユーズST-A、ソユーズ2.1bがソユーズST-Bと名付けられて運用が行われている。STというのは同機が装備する「ST型」と名付けられた、ロケットの直径よりも一回りほど太いフェアリングに由来している。

の最終段に搭載されていたフリガートは、ロシアのNPOラーヴォチキン社によって開発・製造されている上段で、ソユーズやゼニート・ロケットで使われている。非対称ジメチルヒドラジンと四酸化二窒素を推進剤とし、最大3日間の軌道滞在と、20回以上ものエンジンの再着火が可能だ。またタンク形状が異なるいくつかの種類が存在し、今回のミッションで使われたのはフリガートMTと名付けられたバージョンだ。

フリガートMTは2014年8月22日に、ガリレオFOC M1 SAT 5、6の2機を載せ、ソユーズST-Bで打ち上げられたものの、計画から大きく外れた軌道に衛星を投入してしまうという失敗を起こしている。その後の調査で、飛行中に姿勢制御スラスターの燃料の配管が凍り詰まってしまったことで、正常な姿勢を保てなくなったことが原因と結論付けられている。また、もともとの設計に不備があったとされ、製造元のNPOラーヴォチキン社では事故後、フリガート・シリーズの設計変更などが行われた。それ以降の打ち上げでは問題は起きていない。

 

■Arianespace - Mission Update - Soyuz' launch success with Galileo satellites maintains a record mission pace for Arianespace in 2015
http://www.arianespace.com/news-mission-update/2015/1341-vs12-success.asp