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【▲ STS-107のクルー。上段左から:デイビッド・ブラウン飛行士、ローレル・クラーク飛行士、マイケル・アンダーソン飛行士、イラン・ラモーン飛行士。下段左から:リック・ハズバンド飛行士、カルパナ・チャウラ飛行士、ウィリアム・マッコール飛行士(Credit: NASA)】

こちらは2003年に実施されたアメリカ航空宇宙局(NASA)の「STS-107」ミッションで宇宙飛行を行った7名の宇宙飛行士たち。船長を務めたのは下段左端のリック・ハズバンド飛行士で、上段右端のイラン・ラモーン飛行士はイスラエル初の宇宙飛行士でした。画像中央にあるのは彼らの名前を記したSTS-107のミッションパッチです。

【▲ 2003年1月16日、STS-107ミッションでケネディ宇宙センターから打ち上げられたスペースシャトル「コロンビア」(Credit: NASA)】
【▲ 2003年1月16日、STS-107ミッションでケネディ宇宙センターから打ち上げられたスペースシャトル「コロンビア」(Credit: NASA)】

米国東部標準時2003年1月16日10時39分、7名のクルーを乗せたスペースシャトル「コロンビア(Columbia)」はケネディ宇宙センター39A射点を飛び立ち、8分半後に地球周回軌道へ到達しました。STS-107では貨物室に研究用として「スペースハブ(Spacehab)」モジュールが搭載されており、クルーは16日間に渡って微小重力環境での様々な研究に取り組むことになります。

【▲ コロンビアの船内から窓越しに撮影された貨物室の「スペースハブ」モジュール(Credit: NASA)】
【▲ コロンビアの船内から窓越しに撮影された貨物室の「スペースハブ」モジュール(Credit: NASA)】

7名はレッドとブルーの2チームに分かれ、交代制で絶え間なく研究活動に従事しました。また、ミッション後半の1月28日には、スペースシャトル「チャレンジャー」打ち上げ時の事故(1986年1月28日)および「アポロ1号」地上試験中の事故(1967年1月27日)で命を落とした宇宙飛行士たちを偲び、敬意を表したと伝えられています。

【▲ スペースハブで撮影されたSTS-107クルーの集合写真(Credit: NASA)】
【▲ スペースハブで撮影されたSTS-107クルーの集合写真(Credit: NASA)】

STS-107のクルーは無事に帰還することができませんでした。米国東部標準時2003年2月1日朝、コロンビアはケネディ宇宙センターへ帰還するべく地球周回軌道を離れ、大気圏に再突入します。しかし同日8時59分、着陸まであと16分の時点でミッションコントロールセンターとの通信が途絶。コロンビアは空中分解し、テキサス州やルイジアナ州などの広い範囲に残骸が落下したのです。

事故後の調査で、原因はスペースシャトルの外部燃料タンク表面から脱落した断熱材(発泡ポリウレタン)の破片だったと結論付けられました。2003年5月までにサウスウエスト研究所(SwRI)の主導で行われた実験では、実際に断熱材の衝突によってスペースシャトルの主翼前縁を熱から保護する耐熱パネル(強化カーボンカーボン材料=RCC)に破孔が生じています。

【▲ コロンビア空中分解事故後の実験で破孔が生じたスペースシャトルの主翼前縁用耐熱パネル(Credit: NASA)】
【▲ コロンビア空中分解事故後の実験で破孔が生じたスペースシャトルの主翼前縁用耐熱パネル(Credit: NASA)】

スペースシャトルの打ち上げ時に使用された3基の主エンジン(SSME)は、機体下部に接続した使い捨て型の外部燃料タンクから推進剤(液体水素と液体酸素)を供給されていました。外部燃料タンクの表面は推進剤を低温に保つための断熱材に覆われていましたが、その一部が打ち上げ中に脱落してコロンビアの左翼前縁を保護していた耐熱パネルを直撃。断熱材の衝突で左翼が損傷したコロンビアは、大気圏再突入時に損傷箇所付近が高熱に晒されたことで左翼が徐々に破壊され、空中分解に至ったとみられています。

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なお、打ち上げ時に断熱材の一部が脱落してコロンビアの左翼に衝突した可能性はSTS-107のミッション中にすでに把握されていて、クルーにも伝えられていました。しかし、過去のミッションでも断熱材の剥離が起きていたことから損傷の可能性はNASAの上層部に重く受け止められず、軌道上のコロンビアを撮影して断熱材衝突の影響を調査したいとする技術者の要求も退けられていました。コロンビアの空中分解事故を受けてスペースシャトルの飛行は2005年7月まで中断。国際宇宙ステーション(ISS)の組み立て完了後に退役することが決定し、アトランティスによる2011年7月のSTS-135ミッションが最後の飛行となりました。

【▲ 2023年1月26日、アーリントン国立墓地のセレモニーで献花するNASAのビル・ネルソン長官(Credit: NASA/Aubrey Gemignani)】
【▲ 2023年1月26日、アーリントン国立墓地のセレモニーで献花するNASAのビル・ネルソン長官(Credit: NASA/Aubrey Gemignani)】

2023年1月26日、NASAは2023年の「追悼の日(Day of Remembrance)」を迎えました。例年1月末頃に設けられている追悼の日は、飛行中や試験中の宇宙船で亡くなった宇宙飛行士たちをはじめ、宇宙開発に携わるなかで命を落としたすべての人々を称えるとともに、宇宙へと挑戦し続ける思いを確かめる日となっています。

前述の通り、1月下旬から2月にかけての時期はNASAの歴史上、悲劇的な事故が集中しています。1967年1月27日には当時最新鋭の有人宇宙船だったアポロ1号の地上試験中に船内で火災が発生し、ヴァージル・“ガス”・グリソム船長以下3名が亡くなる事故が発生。1986年1月28日には打ち上げ時に片方の固体燃料ロケットブースターに生じたトラブルが原因で、離陸から73秒後にチャレンジャーが空中分解し、フランシス・R・“ディック”・スコビー船長以下7名が亡くなっています。コロンビアの空中分解事故も合わせれば、NASAがこの時期に失った宇宙飛行士は17名に上ります。

「STS-107の再突入時にコロンビアのクルーが失われてから今年で20周年を迎えます。ある人にとっては一生のように、またある人にとっては一瞬のように思えるでしょう。しかしNASAにとってその時間は今も息づいていて、私たちの文化を形作り、意思決定に情報をもたらし、前進の助けとなっています」(ケネディ宇宙センターのジャネット・ペトロ所長)

【▲ 2023年1月26日、ケネディ宇宙センターのセレモニーで献花するNASAのボブ・カバナ副長官ら(Credit: NASA/Kim Shiflett)】
【▲ 2023年1月26日、ケネディ宇宙センターのセレモニーで献花するNASAのボブ・カバナ副長官ら(Credit: NASA/Kim Shiflett)】

宇宙飛行士が亡くなる事故はアメリカに限ったことではなく、旧ソ連でも「ソユーズ1号」と「ソユーズ11号」の計4名の宇宙飛行士が帰還時に亡くなっています。近年では2014年10月、民間企業ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船「VSSエンタープライズ」が試験飛行中に墜落し、クルー2名が死傷する事故が起きました。

また、2018年10月にはロシアの宇宙船「ソユーズMS-10」が打ち上げに失敗し、米ロ2名の宇宙飛行士が緊急脱出する出来事がありました。2022年12月には国際宇宙ステーション(ISS)に係留中の宇宙船「ソユーズMS-22」から冷却材が漏洩するなど、人命が失われるには至らないトラブルも起きています。

NASAは現在、アポロ計画以来半世紀ぶりの有人月面探査計画「アルテミス」を推進しています。2022年には新型宇宙船「オリオン(Orion、オライオン)」と新型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」の無人試験飛行にあたる最初のミッション「アルテミス1」が11月から12月にかけて実施され、無事成功しました。NASAはオリオン初の有人飛行となる「アルテミス2」ミッションを2024年に、アルテミス計画初の月面着陸が行われる「アルテミス3」ミッションを2025年に実施する予定です。

地球低軌道に宇宙飛行士が常駐し、民間企業による宇宙旅行も始まった現代までの、そして数年後に再び始まる見込みの有人月面探査や、その先に見据えられた火星有人探査に至る道程は、多くの人々の努力と献身によって支えられています。今後は民間人が宇宙飛行に臨む機会もより増加するはずであり、事故やトラブルのリスクを可能な限り低く抑えるためにも、亡くなった飛行士たちが遭遇した出来事を忘れることはできません。

「なぜNASAは追悼の日を設けているのか。それは亡くなった仲間を弔うためですが、より大切なのは、アポロ、チャレンジャー、コロンビアから学んだ厳しい教訓を忘れないことです。最後のミッションでスペースシャトルが打ち上げられた時、従業員の半分はまだNASAにいなかったことでしょう。二度と繰り返さないために教訓から学ぶことが大切なのです」(NASAのボブ・カバナ副長官)

 

Source

  • Image Credit: NASA
  • NASA - NASA Day of Remembrance
  • NASA - Day of Remembrance Marks 20th Anniversary of Columbia Crew Loss
  • NASA - 20 Years Ago: Remembering Columbia and Her Crew

文/sorae編集部

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