
こちらは、NASA=アメリカ航空宇宙局のチャンドラ(Chandra)X線宇宙望遠鏡が観測した超新星残骸「カシオペヤ座A」です。

カシオペヤ座の方向、約1万1000光年先にあるカシオペヤ座Aは、1999年に打ち上げられたチャンドラが当初から観測し続けている天体です。
超新星残骸は、質量が太陽の8倍以上ある恒星が超新星爆発を起こした後に観測される天体です。爆発した星の周囲に広がるガスを衝撃波が加熱することで、可視光線やX線といった電磁波が放射されていると考えられています。
恒星は核融合反応を通じて元素を生成する
輝く恒星のエネルギー源は、内部で起こる核融合反応です。最初は水素から始まりますが、その後はヘリウム、炭素、ネオン、酸素、ケイ素といったように、核融合反応で生成されたより重い元素から、さらに重い元素が生成されていくようになります。
もしもこのような大質量星の内部を見ることができたら、重い元素の上に軽い元素が積み重なった、まるで玉ねぎのような層状の構造を目にすることになるでしょう。

やがて鉄でできたコア(中心核)が生成されるようになりますが、一定の質量(太陽の約1.4倍)を超えたコアは自重を支えられなくなって崩壊し、その反動で恒星の外層が吹き飛びます。大質量星が起こすタイプの「II型超新星」は、このようにして発生すると考えられています。また、爆発の際には鉄より重い元素も生成されると考えられています。
超新星爆発で撒き散らされた物質は、再び集まって次の世代の星を生み出します。宇宙誕生当初に存在していた元素はほぼ水素とヘリウムだけだったと考えられていますから、私たちの身体を形作っているさまざまな元素も、恒星の活動を通じて生成されてきたことになります。
爆発の数時間前に起きた恒星内部の変化の証拠?
明治大学の佐藤寿紀専任講師をはじめとする研究チームは、チャンドラの観測データを分析した結果、カシオペヤ座Aを残した恒星の内部構造が爆発の数時間前に破壊されていたことを示す証拠を発見したとする研究成果を発表しました。
研究チームによると、近年、超新星爆発を起こす直前の恒星では、内部で生じる激しい核融合反応によって層構造が破壊される現象、通称「シェルマージャー(Shell merger)」が起こるのではないかと予測されていました。ただ、恒星の表面から放射される光(電磁波)を観測しても、内部の様子を探ることは困難です。
そこで研究チームは、チャンドラ宇宙望遠鏡によるカシオペヤ座Aの観測データを分析。その結果、「シリコンが豊富でネオンが少ない領域」と、反対に「ネオンが豊富でシリコンが少ない領域」が、隣り合うように存在していることが明らかになりました。この不均一なシリコンとネオンの分布について、研究チームは、層構造を破壊するシェルマージャーが実際に起きたことを示す証拠だと考えています。


カシオペヤ座Aを残した恒星が爆発する前、その内部ではシリコンの豊富な層の一部が星の外側へ向かって上昇し、より軽いネオンの豊富な層に衝突するとともに、ネオンの層の一部を星の内側に向かって移動させたのではないかというのです。超新星残骸に残されたシリコンとネオンの不均一な混合の様子からは、シェルマージャーが爆発のわずか数時間前に起きたことが示唆されるといいます。
大質量星はそのすべてが超新星爆発に至るのではなく、爆発せずに潰れてブラックホールを残す場合もあると考えられています。層構造を破壊するような恒星内部の強い乱流は超新星爆発を促す可能性も示されていることから、その証拠が見つかったとする今回の研究成果は、恒星の最期が爆発で終わるのか、それとも静かに潰れて終わるのかを左右するプロセスを解明する上での重要な手がかりとなるかもしれません。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- チャンドラX線センター - NASA's Chandra Reveals Star's Inner Conflict Before Explosion
- 明治大学 - 星の死に際の “破壊的核燃焼” を明らかに~超新星残骸から爆発直前の激しい核燃焼過程の観測的証拠を掴む~
- Sato et al. - Inhomogeneous Stellar Mixing in the Final Hours before the Cassiopeia A Supernova (The Astrophysical Journal)





















