「太陽系外原始惑星同士の衝突」により剥ぎ取られた大気の痕跡を発見
ほぼ地球サイズの原始惑星とより小さい原始惑星が秒速10kmで衝突したと考えられるといいます。そのイメージ図(Image Credit:Mark A. Garlick)
ほぼ地球サイズの原始惑星とより小さい原始惑星が秒速10kmで衝突したと考えられるといいます。そのイメージ図(Credit: Mark A. Garlick)
【▲ほぼ地球サイズの原始惑星とより小さい原始惑星が秒速10kmで衝突したと考えられるといいます。そのイメージ図(Credit: Mark A. Garlick)】

マサチューセッツ工科大学は、マサチューセッツ工科大学地球大気惑星科学科の大学院生であるタジャナ・シュナイダーマンさん率いる研究チームが、恒星「HD172555」の恒星系内において「ほぼ地球サイズの原始惑星と、より小さな原始惑星が衝突し、剥ぎ取られた一方の原始惑星の大気の痕跡を発見した」と発表しました。(2021年10月20日発表)

恒星HD172555は、2300万年ほど前に誕生したまだ若い恒星です。地球のとても近くにあり、95光年しか離れていません。

このHD172555はとても奇妙な残骸円盤(debris disk)を持っています。残骸円盤は惑星形成時の微惑星同士の衝突などによって形成されますが、HD172555の残骸円盤には、通常の残骸円盤には含まれていない鉱物が大量に含まれていると共に、その粒子がとても小さいのです。

そのため、HD172555の残骸円盤はHD172555の恒星系内で起こった原始惑星同士の衝突の痕跡ではないかと考えられてきました。

そこで研究チームは、これを踏まえつつHD172555に関するアルマ望遠鏡のパブリックアーカイブデータを詳しく分析したところ、HD172555から10天文単位(1天文単位は太陽から地球までの平均距離)ほどのところを残骸円盤と共に大量の一酸化炭素ガスの環(a carbon monoxide gas ring)が周回していることが解りました。

一酸化炭素は恒星の光によって分解されやすいため、通常このような恒星から近い距離に、このような大量の一酸化炭素が存在していることは大変珍しいです。

そこで、研究チームが、この一酸化炭素ガスの環を説明するためにさまざまなシナリオを検討した結果、形成にかかった「期間」「形態」「組成」「恒星」の年齢などから、次のようなシナリオにたどりつきました。

少なくても今から20万年前ほぼ地球サイズの原始惑星とより小さな原始惑星秒速10kmで衝突。一酸化炭素ガスは、その時、剥ぎ取られた一方の原始惑星の大気の痕跡であるというわけです。ちなみに、HD172555のような若い恒星系では、原始惑星同士の衝突が起こることは、珍しいことではないそうです。

シュナイダーマンさんは、今回の研究成果は、「一酸化炭素を手がかりに(太陽系外において)いわゆる、ジャイアントインパクトを探す道を提供するものです」とコメントしています。

 

Image Credit:Mark A. Garlick
Source:マサチューセッツ工科大学論文
文/飯銅重幸(はんどうしげゆき)