6光年先のバーナード星で太陽系外惑星が見つかる さらに3つの候補も
【▲ バーナード星を公転する太陽系外惑星の想像図(Credit: ESO/M. Kornmesser)】

カナリア天体物理学研究所(IAC)のJonay González Hernándezさんを筆頭とする研究チームは、「へびつかい座(蛇遣座)」の方向約6光年先の恒星「Barnard’s star(バーナード星)」で太陽系外惑星を発見したとする研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文はAstronomy & Astrophysicsに掲載されています。

太陽系外惑星バーナード星bを発見

研究チームが報告した系外惑星は「Barnard b(バーナード星b)」と呼ばれており、最小質量は地球の約0.37倍(火星の質量の約3倍)で、主星であるバーナード星を約3.15日周期で公転しているとみられています。バーナード星は連星を成していない単一の恒星としては太陽に最も近い星として知られています。

主星からBarnard bまでの距離は約0.023天文単位で、太陽から水星までの平均距離(約0.39天文単位)の6パーセントほどしか離れていません。赤色矮星であるバーナード星の表面温度は太陽の半分程度(約2900℃)と低いものの、Barnard bの公転軌道はバーナード星のハビタブルゾーンの内側に位置しており、表面の平衡温度は約125℃と推定されています。

バーナード星を公転する太陽系外惑星の想像図
【▲ バーナード星を公転する太陽系外惑星の想像図(Credit: ESO/M. Kornmesser)】

今回の成果は、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が運営するパラナル天文台の「超大型望遠鏡(VLT)」に設置された分光観測装置「ESPRESSO」を使用して4年間にわたって取得された156件のデータセットをもとに、「視線速度法」という手法を用いた分析の結果として得られました。研究チームによると、Barnard bの他にも公転周期が2.34日、4.12日、6.34日の惑星が存在する可能性があるといい、確認にはESPRESSOによる追加観測が必要とされています。

なお、バーナード星については2018年にもIgnasi Rablisさんを筆頭とする研究チームが系外惑星の発見を報告しています。Rablisさんらが報告した惑星は最小質量が地球の約3.2倍、公転周期が約233日と推定されていましたが、その後にバーナード星の活動に由来する一時的な信号だと反論されていました。González Hernándezさんらはこの惑星についても検証を行いましたが、存在を裏付けるデータは得られなかったということです。

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視線速度法・トランジット法・透過スペクトル

系外惑星の観測では「視線速度法(ドップラーシフト法)」および「トランジット法」という2つの手法が主に用いられています。

「視線速度法」とは、系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きをもとに、系外惑星を間接的に検出する手法です。

惑星の公転にともなって主星が揺れ動くと、光の色は主星が地球に近付くように動く時は青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽくといったように、周期的に変化します。こうした主星の色の変化は天体のスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)を得る分光観測を行うことで検出されています。視線速度法の観測データからは系外惑星の公転周期や最小質量を求めることができます。

【▲ 参考動画:系外惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)

もう一つの「トランジット法」とは、系外惑星が主星(恒星)の手前を横切る「トランジット(transit)」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、系外惑星を間接的に検出する手法です。

繰り返し起きるトランジットを観測することで、その周期から系外惑星の公転周期を知ることができます。また、トランジット時の主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、系外惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能です。

【▲ 参考動画:系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)

また、系外惑星がトランジットを起こしている時の主星の光には、系外惑星の大気(存在する場合)を通過してきた光もわずかに含まれています。惑星の大気を通過してから届いた主星のスペクトルは「透過スペクトル」と呼ばれていて、系外惑星の大気に含まれる物質が特定の波長の電磁波を吸収したことで生じる暗い線「吸収線」が現れます。透過スペクトルを通常のスペクトルと比較すればどのような吸収線が現れているのかがわかるので、系外惑星の大気組成を調べることができます。

恒星の光を利用して太陽系外惑星の大気組成を調べる手法のイメージ図
【▲ 参考画像:恒星(左)の光を利用して太陽系外惑星(中央下)の大気組成を調べる手法のイメージ図。系外惑星の大気を構成する物質が一部の波長を吸収するため、大気を通過して地球(右)に届いた主星の光のスペクトル(透過スペクトル)を分析することで、惑星の大気組成を調べることができる。また、大気にヘイズ(もや)がある場合は青い光が散乱して、通過した光は少し赤くなる(Credit: ESO/M. Kornmesser)】

 

Source

  • ESO - Scientists discover planet orbiting closest single star to our Sun
  • González Hernández et al. - A sub-Earth-mass planet orbiting Barnard’s star (Astronomy & Astrophysics)

文・編集/sorae編集部
#バーナード星 #太陽系外惑星