RingColorsOH_Vanderbei_1080(Credit:Robert Vanderbei (Princeton U.))
【▲ 環状星雲M57とその周囲の恒星の分光画像(Credit: Robert Vanderbei (Princeton U.))】

冒頭の画像は「環状星雲」と呼ばれる、こと座のM57とその周囲の恒星を回折格子(光の回折を利用して分光する素子)を使って撮影した「スペクトル」画像です。

M57が発している2色の明るい光(輝線)、すなわち水素による赤色と酸素による青色による画像が画面中央の左寄りに写っています。中央右寄りの画像は通常見られるような色に合成したものです。一方、恒星は可視光領域のほとんどの光を出しているので、色とりどりの棒(連続スペクトル)として写っています。

天体の光を分光することで、天体を構成している元素や天体の速度、距離などを知ることができます。そのため、分光法は天文学では欠かせない道具となっています。

こちらはよく知られたM57の画像ですが、星雲の化学組成を示すために赤外線などを含む様々な波長に応じて色付けされています。星雲の中心にある小さな白い点は白色矮星です。

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赤外線などを含む様々な波長に応じて色付けされたM57の画像(Credit: NASA, ESA and the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration)
【▲ 赤外線などを含む様々な波長に応じて色付けされたM57の画像(Credit: NASA, ESA and the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration)】

関連:薔薇か牡丹のようにも見える、こと座に咲いた惑星状星雲の姿

M57は「環状星雲」の名前で親しまれていますが、天文学的には「惑星状星雲」に分類されています。惑星状星雲は比較的小さな望遠鏡でも見ることができるため、発見や観測された当時、惑星のように見えたことに由来しています。

地球から見たM57は地球側に向けて傾いているため、その「環」(リング)を正面から見ることができます。

こちらの動画は、こと座の地上からの眺めと星座絵に始まり、ハッブル宇宙望遠鏡による環状星雲の画像にズームインします。中盤からは、星雲内部の非常に複雑な構造を示す3Dモデルが示されています。フットボールのような構造やM57「花が咲く」プロセス(ガスの放出過程)が見て取れます。

ところで、この動画の冒頭で示されている、こと座の星座絵に違和感を持つ人もいるのではないでしょうか。

わたしたちは、こと座といえばふつう「竪琴」のような星座絵を思い浮かべます。しかし、この動画では大きな鳥が竪琴のような弦楽器を抱いているように見えます。

こと座は、非常に古い星図では鳥、とくにハゲタカ と記載され、16世紀ドイツの版画家アルブレヒト・デューラーの北天の星図にはフィドル(弓を用いて演奏する擦弦楽器)を抱いた鳥の姿で絵が描かれているそうです。この星座絵はそういったことに基づいているのかもしれません。

環状星雲M57を含むこと座は、いま見頃を迎えています。M57はこと座のβ星とγ星の中間の少しβ星よりに位置していて(動画を参照)比較的小さな望遠鏡でも楽しむことができます。もし可能ならば2150光年(※)先に目を向けてみましょう。

※M57までの距離(誠文堂新光社『天文年鑑2021年版』より)

 

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Video Credit: NASA, ESA, and G. Bacon, F. Summers and Mary Estacion (STScI)
Image Credit: Robert Vanderbei (Princeton U.)NASA, ESA and the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration
Source: APODNASAウィキペディア
文/吉田哲郎

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