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初期の太陽は連星?
太陽と連星を成していた恒星を描いた想像図(Credit: M. Weiss)

太陽はかつて星団のなかで他の星々とともに誕生したと考えられています。その頃の太陽は別の恒星と連星を成していた可能性があるものの、現在の太陽は単独で存在しており、ペアを組んでいた恒星は見当たりません。今回、連星を成していた頃の太陽が未発見の「第9惑星」を含む天体を外部から捕獲していたとする研究成果が発表されています。

■第9惑星は太陽が連星だった時期に外部から捕獲された可能性

太陽系では現在8つの惑星の存在が確認されていますが、既知の惑星では太陽から最も遠い海王星(太陽からの距離は約30天文単位 ※)の外側、太陽から数百天文単位離れたところに地球の5~10倍の質量がある未発見の惑星が存在するのではないかと予想されています。「第9惑星」「惑星X」と呼ばれるこの惑星は既知の惑星のように太陽系で形成されたものではなく、40億年以上前に太陽系に接近した別の惑星系から移動してきた可能性も指摘されていました。

※…1天文単位=約1億5000万km。太陽から地球までの平均距離に由来する

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ハーバード大学のAmir Siraj氏Avi Loeb氏は、初期の太陽は別の恒星と連星を成しており、未発見の第9惑星および彗星のふるさとと考えられている「オールトの雲」(太陽からの距離は最大で10万天文単位と推定)に存在する天体は、太陽が連星だった時期に外部から捕獲された可能性があるとする研究成果を発表しています。

太陽から1000天文単位ほど離れたところに太陽と同程度の質量の恒星が存在していたと仮定して両氏が分析を行った結果、この恒星が太陽とともに第9惑星の捕獲に関わった可能性が示されたといいます。連星は周囲の天体を捕獲しやすいことが過去の研究によって示されているといい、Lobe氏も「連星は単独の恒星よりもはるかに効率的に天体を捕獲します」と語っています。

今回の研究では、第9惑星以外にも捕獲された複数の天体が同じような軌道を周回していることが予想されています。Siraj氏は、第9惑星や同様の軌道を描く天体が見つかり、太陽系の外部から捕獲されたことが明らかになれば、過去の太陽が連星だったとする説を支持することになるとしています。今のところ第9惑星は見つかっていませんが、両氏は来年の観測開始が予定されているチリのヴェラ・ルービン天文台に期待を寄せています。

未発見の「第9惑星」を描いた想像図
未発見の「第9惑星」を描いた想像図(Credit: Caltech/R. Hurt (IPAC) )

また、従来の理論では海王星の外側を周回する散乱円盤天体とオールトの雲に存在する天体の比率をうまく説明することができなかったといいますが、連星による天体の捕獲を想定した両氏のモデルでは大幅に改善されたとしています。Siraj氏は「オールトの雲に存在する天体は、地球の歴史において水の起源大量絶滅の原因といった大きな役割を果たした可能性があるため、その起源を理解するのは重要なことです」と語ります。

■連星を成していた恒星はどこへ

太陽が連星だった可能性があるとすれば、気になるのはもう一つの恒星の行方です。Loeb氏によると、太陽が誕生した星団を通過していた別の恒星の重力によって、連星を成していた恒星と太陽は引き離されてしまったことが考えられるといいます。

Siraj氏は「はるか昔に離れ離れになった恒星は、今や天の川銀河のどこにいてもおかしくありません」とコメントしています。

 

Image Credit: M. Weiss
Source: CfA
文/松村武宏

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