こちらはカシオペヤ座の方向およそ220万光年先にある不規則銀河「IC 10」を撮影した画像。不規則という分類名が示すように、星々が無秩序に集まっているような姿をしています。IC 10は19世紀後半には発見されていたものの、天の川と重なるような位置に存在しているために観測が難しく、なかなか研究が進まなかったといいます。画像には針状の光をともなう星があちこちに写っていますが、これらはIC 10のずっと手前、天の川銀河にある星々です。
天の川銀河やアンドロメダ銀河(M31)などと同じ局部銀河群(局所銀河群)に属するIC 10は、星形成が活発なスターバースト銀河とされています。局部銀河群におけるスターバースト銀河はIC 10のみとされているため、IC 10は天の川銀河から一番近いスターバースト銀河ということになります。
活発に星を生み出すIC 10では、表面温度が摂氏20万度に達するような巨大で明るいウォルフ・ライエ星や、恒星と中性子星もしくはブラックホールから成るX線連星が幾つも見つかっています。X線連星のなかには中性子星やブラックホールがウォルフ・ライエ星とペアを組んでいるとみられるものもあり、大きく変化するX線の強さは連星の相互作用の激しさを示しているようです。急速に星々が形成されるスターバースト銀河のなかでも最寄りのIC 10は、研究者がX線連星を観測するのに適した銀河とされています。
画像はセロ・トロロ汎米天文台で撮影され、2020年6月18に公開されました。
Image Credit: CTIO/NOIRLab/NSF/AURA
Source: NSF/NOIRLab / chandra.harvard.edu
文/松村武宏