広告
広告
中国、宇宙空間でナミアゲハの羽化に成功 密閉カプセル内で蛹から成虫へ

中国の重慶大学は2026年2月2日、宇宙空間を周回する密閉カプセル内でナミアゲハの蛹が羽化し、成虫となって飛翔する様子を確認したと発表しました。

実験ペイロード「神農開物2号(Shennong Kaiwu 2)」は2025年12月13日午前9時8分(中国標準時)、快舟11号Y8ロケットによって酒泉衛星発射センターから打ち上げられました。ペイロードは北京の民間宇宙企業「AZSPACE(紫微宇通科技)」が開発した小型貨物宇宙船「DEAR-5(迪迩5号)」に搭載され、低軌道へ投入されています。

2025年12月15日に宇宙で撮影された、神農開物2号の密閉チャンバー内で蛹から羽化した「ナミアゲハ」(Credit: 重慶大学)
【▲ 2025年12月15日に宇宙で撮影された、神農開物2号の密閉チャンバー内で蛹から羽化した「ナミアゲハ」(Credit: 重慶大学)】

神農開物2号は重量8.3kg、内部容量14.2リットルの小型密閉カプセルで、マグネシウム合金製の生物密閉チャンバーを採用しています。内部には酸素と食料を生成する植物(生産者)、蝶(消費者)、廃棄物を分解する微生物(分解者)による「三連鎖」の物質循環システムが構築されました。

重慶大学によると、今回の実験では宇宙の極限環境をできる限り再現するため、放射線シールドや能動的な温度制御を設けず、全波長域照明のみで生態系を維持しました。地上に送信された画像データからは、羽化した蝶が密閉チャンバー内を自由に飛び回り、植物の葉に止まる様子が確認されています。地上とは行動パターンに違いがあるものの、微小重力環境への良好な適応性を示したとのことです。

2025年12月2日、酒泉衛星発射センターにて神農開物2号ペイロードとともに撮影する重慶大学の研究チーム(Credit: 重慶大学)
【▲ 2025年12月2日、酒泉衛星発射センターにて神農開物2号ペイロードとともに撮影する重慶大学の研究チーム(Credit: 重慶大学)】

実験を主導したのは重慶大学の謝更新(Xie Gengxin)教授です。謝教授は神農開物2号の設計責任者(チーフデザイナー)として開発を指揮しました。謝教授は2018年末に打ち上げられた嫦娥4号に搭載された月面植物発芽実験でも設計責任者を務め、2019年1月に月の裏側で綿花の種子を発芽させることに成功しています。

宇宙空間での蝶の実験は過去にも行われています。2009年にはNASAの教育プログラムの一環として、スペースシャトル「アトランティス」でヒメアカタテハやオオカバマダラの幼虫が国際宇宙ステーション(ISS)へ運ばれ、微小重力環境下での発育が観察されました。ただしこれは有人環境下での教育目的の実験であり、今回のように完全無人・自律型の閉鎖生態系で複雑な生命サイクルを完遂させた点で、神農開物2号の実験は異なるアプローチといえます。

将来の月面基地や火星有人探査では、長期滞在に必要な食料生産や酸素供給が課題となります。密閉環境内で植物・昆虫・微生物が相互作用しながら生態系を維持できれば、植物の受粉を蝶が担う「宇宙農場」の実現可能性も開けてきます。

 

文・編集/sorae編集部

関連記事

参考文献・出典