宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月23日、「こうのとり」5号機の第1回高度調整軌道制御を完了したと発表した。24日に予定されている国際宇宙ステーション(ISS)への到着まで、残された高度調整軌道制御はあと2回となった。

JAXAによると、8月23日の2時55分(日本時間、以下同)に第1回高度調整軌道制御の完了を確認したという。また、「こうのとり」5号機の状態は正常で、計画通り飛行を継続しているという。

「こうのとり」5号機は2015年8月19日20時50分49秒、H-IIBロケットによって種子島宇宙センターから打ち上げられた。ロケットは順調に飛行し、打ち上げから15分後に「こうのとり」が分離され、予定通りの軌道に入った。

その後、機器の立ち上げや、NASAのデータ中継衛星とのリンクや三軸姿勢制御の確立にも成功し、8月20日の4時25分には、最初の軌道修正となる初期高度調整軌道制御が完了したことが確認されている。

今後、8月24日の12時7分ごろに第2回軌道修正を、また同日15時12分ごろに第3回軌道修正を行い、徐々にISSに接近する予定となっている。

そして24日の19時55分ごろにISSのロボット・アームによって把持(キャプチャー)され、続いて25日0時30分ごろに固定金具を使ってISSに取り付け、最終的に3時ごろに「こうのとり」の与圧キャリアにある圧変電器(DDCU)の起動完了をもって、結合が完了される。与圧キャリア内への宇宙飛行士の入室は、25日に予定されている。

「こうのとり」5号機をロボット・アームで捕まえる役目は、現在ISSに滞在中の油井亀美也宇宙飛行士が務める。またその際、米航空宇宙局(NASA)のジョンスン宇宙センターでは、若田光一宇宙飛行士が通信担当(CAPCOM、キャプコム)を務め、油井飛行士のサポートを行うことになっている。

また25日には、非与圧部に搭載されている暴露パレットが引き出され、そこに搭載されている実験機器などをISSに設置する作業も予定されている。

物資の搬出作業などが行われた後は、ISSで発生したゴミや、不要になった実験機器などを搭載し、9月下旬にISSから離脱。その翌日に大気圏に再突入して燃え尽き、ミッションを終える予定となっている。

「こうのとり」(HTV)は、ISSに水や食料品、生活用品、そして実験機器やISSの予備部品などの物資を輸送することを目的として、宇宙開発事業団(NASDA、現在のJAXA)と三菱重工によって開発された無人の補給船である。

打ち上げ時の質量は約16.5トンで、最大で約6トンの物資を搭載することが可能となっている。1気圧に保たれた「与圧部」と、宇宙空間に曝け出された「非与圧部」の、2か所の異なる貨物の搭載区画を持っており、与圧部には飲料水や食料品、日用品や実験パレットを、非与圧部にはISSの船外に設置する、部品や、大型の実験機器や観測機器などを搭載することできるようになっている。
「こうのとり」は、現在運用されているISSへの補給船の中で、機体が最も大きく、また搭載量も多い。これまでで最も大きい無人補給船は欧州のATVだったが、2014年に引退したことで「こうのとり」が最大となった。

またその機体の大きさを活かして、大型の実験ラックを複数、ISSへ輸送することもできる。また、ISSの日本実験棟「きぼう」で使用する大型の実験装置も運ぶことができ、両者を一度に運べる唯一の機体でもある。大型の実験ラックや船外実験装置はスペース・シャトルでも運べたが、こちらも2011年に引退したことで、現在は「こうのとり」が唯一となっている。