宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月7日、2日より行われていた小惑星探査機「はやぶさ2」の第2回イオン・エンジン連続運転が正常に完了したと発表した。これにより、今年12月3日に予定されている地球スイングバイに向けて、軌道・速度がほぼ整ったことになる。

「はやぶさ2」は2014年12月3日に打ち上げられた後、搭載機器の初期確認を2015年3月3日に終え、また同日から、イオン・エンジンを連続で運転して探査機の速度を上げる、第1回イオン・エンジン連続運転が行われた。この第1回連続運転時間は3月21日に完了し、運転時間は409時間を記録している。

連続運転は大きく2回に分け、合計約600時間行われることになっていたが、打ち上げの軌道投入精度や第1回目連続運転での軌道制御精度が高かったことから、第2回目の稼働時間を当初予定の約200時間から約100時間に短縮することが可能になった。

第2回連続運転は6月2日から開始され、6月7日13時から20時にかけて行われた「はやぶさ2」の運用において取得された探査機の状態を示すデータ(テレメトリー・データ)から、6月7日0時25分(6日深夜、日本標準時)をもって、正常に終了したことが確認できたという。

イオン・エンジン連続運転の終了は、前日の運用までにあらかじめ探査機に送信したコマンド・プログラムが自動で流れ、そのタイム・シーケンスの中で「噴射終了」の指示が発信される仕組みになっていた。これは噴射終了時、「はやぶさ2」は日本の運用局からは見えない位置にいるためだ。そこで実際の「噴射終了」確認は、7日の運用時に得られた探査機のテレメトリー・データを取得することで行われた。

この第2回連続運転における噴射時間は102時間で、これは計画どおりの値であった。また第1回目(409時間)と合わせた合計時間は511時間となり、これにより「はやぶさ2」は秒速60mほど速度を増すことになった。

また第2回連続運転中のイオン・エンジン稼働状態、連続運転後の軌道情報などに関しては、本日までに取得されたテレメトリー・データの詳細解析を順次行い、結果がまとまり次第、改めて発表されるとのことだ。

この第2回連続運転の完了により、「はやぶさ2」は目的地の小惑星1999 JU3に向けた軌道に遷移するための地球スイングバイに向けて、軌道・速度がほぼ整ったことになる。地球スイングバイとは、地球の公転速度を利用した探査機の航行速度の増速と、地球の重力を利用した軌道の変換を行う航法テクニックのことだ。現時点で地球スイングバイは、今年の12月3日に実施される予定となっている。なお、今後地球スイングバイまでの間に、必要に応じて軌道微修正のためのイオン・エンジンが稼働される場合もあるという。

「はやぶさ2」は、かつて2003年に打ち上げられて小惑星イトカワの探査を行い、そして2010年に地球へ帰還した「はやぶさ」の後継機として、2014年12月3日に種子島宇宙センターから打ち上げられた。「はやぶさ2」は自身の持つ観測機器を使って探査を行い、また砂などのサンプルを採取して地球に持ち帰るというミッションを背負っている。「はやぶさ2」による観測や、また持ち帰ってきたサンプルを地球上で分析したり、さらに先代の「はやぶさ」や他の小惑星・彗星探査機が得たデータと比較することで、太陽系の起源と進化や、生命の原材料を探求することを目指す。

目的地の1999 JU3と呼ばれる小惑星は、有機物や含水鉱物をより多く含んでいると考えられている「C型」という種類の小惑星で、先代の「はやぶさ」が赴いたS型小惑星のイトカワと比べ、より始原的な天体であるとされる。

現在行われているイオン・エンジンの連続運転が無事に終われば、今年の11月、12月ごろに地球スイングバイに挑む。そして速度を上げつつ軌道も変え、2018年の6月、7月ごろに目的地である小惑星1999 JU3に到着する予定だ。そこで約1年半にわたって探査活動を行い、2019年11月、12月ごろに小惑星を出発、そして2020年の11月、12月ごろに地球に帰還カプセルを投下する。カプセルは地球の大気圏に再突入し、先代と同じオーストラリアのウーメラ砂漠に着陸する予定だ。また探査機本体はカプセル分離後も航行を続け、別の星の探査を行うことなどが計画されている。