欧州宇宙機関(ESA)の無人補給船ATVの5号機、愛称「ジョルジュ・ルメートル」が2月15日、国際宇宙ステーションへの補給任務を終え、南太平洋上空の大気圏に再突入して燃え尽きた。ATVはこの5号機が最後のミッションとなり、ESAは今後、ATVの技術を活かし、米航空宇宙局(NASA)の新型宇宙船オリオンの開発に参加する。

ATV-5は2014年7月29日、南米仏領ギアナにあるギアナ宇宙センターから、アリアン5 ESロケットに搭載されて打ち上げられた。そして8月12日にステーションに到着し、物資の補給や、スラスターを用いてステーションの軌道変更を行った。

約20tの船体の中には、水や燃料、酸素、食料や生活必需品、実験機器など、約6.6tの補給物資が搭載されていた。これは、これまでATVが運んだ中で最大の積載量であった。

そして2015年2月14日22時40分(日本時間、以下同)に、ゴミなどを搭載して国際宇宙ステーションを出航し、2月15日3時4分に南太平洋上空の大気圏に再突入して燃え尽き、ミッションを終えた。

ATVはエアバス・ディフェンス&スペース社(旧EADSアストリウム社)が開発した無人補給船で、国際宇宙ステーションに物資や燃料などを補給することを目的としていた。2008年に1号機が打ち上げられ、2011年からは毎年1機が打ち上げられた。

ATV-5には、ベルギーの天文学者ジョルジュ・ルメートルの名前が与えられている。歴代のATVにも、1号機にはジュール・ヴェルヌ、2号機にはヨハネス・ケプラー、3号機にはエドアルド・アマルディ、4号機にはアルベルト・アインシュタインと、それぞれ歴史上の偉人の名前が付けられている。

ATVの飛行は今回で最後となり、今後のステーションへの補給は、ロシアのソユーズ宇宙船とプログレス補給船、米スペースX社のドラゴン、オービタル・サイエンシズ社のシグナス、そして日本のHTV「こうのとり」が担う。

一方、ESAによる有人宇宙開発への取り組みが終わるわけではなく、ATVの開発と運用を通じて得られた技術を生かし、NASAが開発中の新型宇宙船オリオンの、サービス・モジュール(機械船)の開発を担うことになっている。すでに開発は始まっており、2017年に実施される予定の、EM-1(Exploration Mission 1)で飛行する、オリオンの2号機に初装備される予定となっている。EM-1は無人のオリオンを月まで飛ばし、月の裏側で折り返し、地球へ帰還させるというものだ。

ESAの有人飛行計画の責任者を務めるThomas Reiter氏は「ATVの5回にわたる運用を通じて得た経験と知識、成果が、欧州製の機械船を持つオリオン宇宙船による将来の宇宙探査に活用されることを楽しみにしています」と語った。

 

■Last ATV reentry leaves legacy for future space exploration / ATV / Human Spaceflight / Our Activities / ESA
http://www.esa.int/Our_Activities/Human_Spaceflight/ATV/Last_ATV_reentry_leaves_legacy_for_future_space_exploration