ロシアのNPOマシナストラィエーニヤ社は12月19日、南アフリカ向けに製造した偵察衛星コーンダルEを搭載した、ストレラー・ロケットの打ち上げに成功した。ストレラーの打ち上げは今回で3機目、コーンダルは2機目の打ち上げとなった。

ロケットは現地時間2014年12月19日10時43分(日本時間2014年12月19日13時43分)、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の175/59発射台(地下サイロ)から離昇した。NPOマシナストラィエーニヤ社やロシア連邦宇宙局によれば、ロケットは順調に飛行し、打ち上げは成功したとのことだ。

その後、米国の宇宙監視ネットワークは、高度約500km、軌道傾斜角74.75度の軌道に、ロケットの最終段とコーンダルEを捕捉しており、打ち上げ成功が裏付けられている。

コーンダルEは合成開口レーダーを搭載した衛星で、南アフリカの国防省によって軍事衛星として製造された。ただし、所有権がロシアと南アフリカのどちらにあるかや、南アフリカ自身が衛星を運用できる権利を持っているかは不明だ。

コーンダルは電子光学センサーを積むタイプと、今回のように合成開口レーダーを積むタイプの2種類があるとされる。

コーンダルの1号機は2013年6月27日に打ち上げられた。この1号機も今回と同じく合成開口レーダーを積むタイプであるとされ、またロシア航空宇宙防衛部隊が運用する偵察衛星とされているが、ロシアの軍事衛星に伝統的に与えられているコスモス番号は割り振られておらず、また衛星が取得した画像は、他の機関も利用しているようだ。

この合成開口レーダーは、衛星の前方に大きく展開させる傘のような形をしており、かつてアルマース1や、ミール宇宙ステーションのプリローダに使われていたものの発展型とされる。レーダーの分解能は、スナップショット・モードで1mから2m、ストリップマップ・モードで1mから3m、スキャンSARモードで5mから30mだという。

コーンダルEはコーンダルの民生バージョンとされ、名前のEは輸出を意味するExportから取られているといわれている。コーンダルもコーンダルEも、合成開口レーダーを積むタイプの打ち上げ時質量は1,150kg、設計寿命は5年ほどとされる。

コーンダルEを打ち上げたロケット、ストレラーは、UR-100N UTTKhと呼ばれる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を基に、NPOマシナストラィエーニヤ社によって開発された3段式の衛星打ち上げ機である。

ちなみに、同じUR-100N UTTKhを基にしたロケットとしてロコットがある。だが、例えばストレラーはUR-100N UTTKhを踏襲して地下サイロから発射されるが、ロコットは新たに地上に造られた発射台から打ち上げられる。当然、後者の方がロケットや衛星にとっては優しい。

もっとも大きく異なるのは第3段で、ストレラーはもともとのUR-100N UTTKhが持っていた、複数の核弾頭(MIRV)の落下位置をばらけさせるためのポスト・ブースト・ヴィークル(PBV)を第3段としてそのまま使用しているが、ロコットで使用されているブリーズKMは新規に開発されたもので、複数回に分けてエンジンを動かすことができ、衛星を多種多様な軌道に、しかも正確に送り届けることが可能なように造られている。

打ち上げ能力も、宇宙ロケットとしてある程度の最適化がなされていることからロコットの方が若干高い。その反面、打ち上げ費用の安さという点では、機体や射場をあまり改造していないストレラーに分がある。

打ち上げ回数にも大きな違いがあり、ロコットは本格的な運用に入ってから今日までに25機が打ち上げられているが、ストレラーは今回を含め、たった3機に過ぎない。

 

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