北朝鮮当局から海上保安庁に対して、2024年5月27日から6月4日まで(日本時間・以下同様)の間に「人工衛星の打ち上げ」を実施するという通報があったことをNHKなどが報じています。北朝鮮が衛星の打ち上げ期間を予告したのは2024年に入ってからは今回が初めてで、2023年11月以来です。【最終更新:2024年5月27日10時台】
海上保安庁の「海の安全情報」ウェブサイトでは、黄海およびルソン島(フィリピン)東の海域に関する「衛星ロケット打ち上げ」の情報が2024年5月27日3時0分付の緊急情報として掲載されています。期間は2024年5月27日0時0分~2024年6月4日0時0分です。
また、同庁が提供している日本航行警報(太平洋、インド洋及び周辺諸海域を航行する日本船舶に対する緊急に必要な情報)を参照すると、黄海に2か所とフィリピン東方の太平洋に1か所、合計3か所の海域を地図上で確認することができます。
通報された海域はすべて、2023年5月・8月・11月に北朝鮮が実施した「チョンリマ(千里馬)1型」ロケットの打ち上げ時と同じです。1回目(5月31日)は2段目エンジンの異常、2回目(8月24日)は飛行中の非常爆発システムの誤作動によって失敗したものの、3回目(11月22日)の実施後に同国は軍事偵察衛星「マンリギョン(万里鏡)1号」の打ち上げに成功したと発表しました。
アメリカ宇宙コマンドは宇宙空間の人工物を識別するための衛星カタログ番号(Satellite Catalog Number: SATCAT)としてマンリギョン1号に「58400」を付与しています。アメリカ宇宙軍の第18宇宙防衛隊(18th Space Defense Squadron)が管理するSpace-Track.orgで公開されている情報によると、同衛星は2024年5月27日時点で高度503km×492km・軌道傾斜角97.41度の地球低軌道を94.57分周期で飛行しています。
今回北朝鮮から通報された海域は過去3回のチョンリマ1型ロケット打ち上げ時と同じであることや、北朝鮮が2024年に3機の軍事偵察衛星を打ち上げる計画を立てていると報じられていることから、今回も地球観測衛星や偵察衛星で利用される極軌道への軍事偵察衛星投入が打ち上げの目的と予想されます。
関連記事
・北朝鮮の衛星「マンリギョン1号」に米軍が衛星カタログ番号を付与(2023年11月25日)
・北朝鮮が偵察衛星の打ち上げに成功したと発表 予告期間の1時間余り前に実施(2023年11月22日)
・北朝鮮、予告していたロケット打ち上げを実施も失敗と発表 10月に再び打ち上げか(2023年8月24日)
・北朝鮮、予告していた飛翔体の発射を実施 打ち上げ失敗し墜落と発表(2023年5月31日)
東西冷戦期の米ソ宇宙開発競争で大陸間弾道ミサイルが人工衛星や有人宇宙船の打ち上げに転用されたように、大陸間弾道ミサイルと衛星打ち上げ用のロケットは表裏一体なシステムでもあります。しかし、地下核実験やミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮に対して、国連安全保障理事会は弾道ミサイル技術を使用した発射をはじめ、弾道ミサイルおよび核関連活動の停止・計画の放棄を安保理決議で義務付けています。
首相官邸によると、今回の打ち上げ予告を受けて岸田総理は「関係省庁間で協力し、情報の収集・分析に万全を期し、国民に対して、適切に情報提供を行うこと」「米国や韓国等関係諸国と連携し、北朝鮮が発射を行わないよう、強く中止を求めること」「不測の事態に備え、万全の態勢を取ること」を2024年5月27日1時47分に指示したということです。
Source
- 海上保安庁 - 海の安全情報
- 海上保安庁 - 日本航行警報
- 首相官邸 - 令和6年5月27日 北朝鮮より衛星を打ち上げるとして通報があったことに関する総理指示(01:47)
- NHK - 北朝鮮「人工衛星」打ち上げを通報 来月4日午前0時までの間
文・編集/sorae編集部
最終更新日:2024/09/04