ヴァージン・ギャラクティック社のスペースシップツーが10月31日(現地時間)、試験飛行中に墜落した。搭乗していた2人のパイロットのうち1人が死亡、もう1人は重傷を負い、病院へ運ばれた。

事故は、スペースシップツーが単独で飛行をしている際に発生した。事故が起きた詳しい状況や、原因はまだ分かっていないが、すでに調査が始められている。

スペースシップツーはこの日、空中発射母機のホワイトナイトツーに懸架され、米太平洋夏時間2014年10月31日9時18分(日本時間2014年11月1日1時18分)に、カリフォーニア州のモハーヴェ宇宙港を離陸した。スペースシップツーは上空へ運ばれた後、10時10分(日本時間2時18分)に分離され、ロケットモーターに点火して飛行を開始した。その直後に何かが起きたとされる。

なお、母機のホワイトナイトツーは無事に着陸している。

すでに現地メディアは、ヘリコプターから撮影した、地上に散らばるスペースシップツーの破片を撮影している。また、目撃者の証言によれば、パラシュートが飛んでいるのを見たとのことで、おそらくは脱出したパイロットのことだと推測される。

現地では連邦航空局(FAA)がすでに調査を始めており、また現地時間の1日午前には、国家輸送安全委員会(NTSB)も現地に入り、調査を始める予定とのことだ。

搭乗していたパイロットの名前は、現時点では明らかにされていないが、両名ともスケールド・コンポジッツ社に所属するパイロットだという。

スペースシップツーはサブオービタル(軌道に乗らない)飛行を行うロケット機で、最大6人の乗客を乗せ、高度100kmまで上昇することができる。乗客は数分間の無重力体験と、青く丸い地球を見ることができ、約25万ドル(約2,800万円)という高額の運賃にもかかわらず、これまでに約700人以上の申し込みがなされているという。

機体を開発しているスケールド・コンポジッツ社は、今からちょうど10年前の2004年に、スペースシップワンと呼ばれる1人乗りの機体を開発して高度100kmに到達し、当時開催されていたアンサリXプライズを獲得している。スペースシップツーはこのスペースシップワンをもとに開発された。

スペースシップツーはこれまでに55回の飛行、そのうち35回の単独飛行を行っており、ロケットモーターに点火して飛行したのはそのうちの3回で、今回が4回目かつ、今年1月以来のことであった。またロケットモーターは今年5月に燃料を変更しており、今回はその新型モーターを搭載、点火する初の飛行でもあった。

同機が搭載するロケットモーターはロケットモーターツーという名前が付けられており、固体の燃料の中に液体の酸化剤を流して燃やす、ハイブリッド・ロケット・モーターが採用されている。これは燃えにくいという欠点はあるものの、逆の言い方をすれば安全性が比較的高いということであり、また火薬を使わないので製造や取り扱いが比較的簡単でもある。

従来、ロケットモーターツーは、推進剤に亜酸化窒素と末端水酸基ポリブタジエン(HTPB)を用いていた。しかしこれは性能が出にくいという問題があり、その改善のため、新たに亜酸化窒素とポリアミド(ナイロン)へと変更されたという経緯がある。

現時点では、ロケットモーターツーが原因か否かということは分からない。なお、事故後に行われた記者会見において、機体を製造したスケールド・コンポジッツ社のケヴィン・ミッキー社長は「新しいロケットモーターは地上で何度も試験しており、また今回機体に搭載されていたモーターも徹底的な試験と検査を経ている。モーターに問題が起こるとは思ってはいなかった」と語っている。

 

■Statement from Virgin Galactic
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