JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2026年5月27日、新型宇宙ステーション補給機1号機「HTV-X1」が大気圏へ再突入し、すべてのミッションを完遂したと発表しました。
JAXAによると、HTV-X1は日本時間2026年5月26日23時09分頃に高度約120kmへ到達して大気圏に再突入し、翌27日00時09分頃までに予定区域へ着水したと推定されています。
HTV-Xとは

HTV-Xは2020年までに合計9機が運用された宇宙ステーション補給機「HTV(こうのとり)」の後継機として開発された無人補給機です。
貨物の搭載能力はHTVが質量4トン・容積49立方mだったのに対し、HTV-Xでは質量5.82トン・容積78立方mと1.5倍ほどに向上。打ち上げ時の質量は約16トンに達し、主にISS(国際宇宙ステーション)への物資輸送を行います。
ISSでの係留期間は最長6か月間ですが、HTV-XはISS離脱後も最長1.5年間にわたって単体で飛行が可能。物資補給を終えた後は、技術実証や実験に対応する軌道上での「実験プラットフォーム」としてのミッションを行えるように設計されています。
前半はISSへの物資輸送ミッション

日本時間2025年10月26日に「H3」ロケット7号機で打ち上げられたHTV-X1は、ISSで長期滞在を行っていたJAXAの油井亀美也宇宙飛行士が操作するロボットアーム「Canadarm2(カナダアーム2)」によって日本時間2025年10月30日に把持(キャプチャ)され、同日のうちにISSへ結合されました。
JAXAによれば、HTV-X1には生活物資や実験機器のほか、日本産の生鮮食品など、合計4トンを超える与圧カーゴ(ISS船内で使用・保管される物資)が搭載され、ISSに滞在中のクルーに届けられました。
後半はプラットフォーム機能を活かした技術実証ミッション
約4か月の係留期間中に不用品を搭載したHTV-X1は、2026年3月7日にISSから離脱し、単独飛行による技術実証ミッションに移りました。
JAXAによると、HTV-X1はその自在な軌道変更・姿勢制御能力や高い搭載性能を活かし、ISS離脱から大気圏再突入までの約2か月半にわたって、主に3つの技術実証ミッションを実施しました。

超小型衛星放出ミッション(H-SSOD)
日本大学の超小型衛星「てんこう2」の放出に成功しました。HTV-Xの軌道変更能力を活かし、高度約400kmのISSよりもさらに高い高度約500kmから放出することで、衛星が大気圏に突入するまでのミッション期間を長く保つことが可能になります。
- JAXAの新型補給機「HTV-X」1号機に搭載されていた超小型衛星の放出を実施(2026年3月12日)

軌道上姿勢運動推定実験(Mt.FUJI)
機体に取り付けられた小型の反射器に向けて、地上からレーザーを照射するSLR(衛星レーザ測距)が実施されました。宇宙機の軌道だけでなく、姿勢の変動を定量的に推定することに世界で初めて成功しており、将来のスペースデブリ(宇宙ごみ)除去技術などへの応用が期待されています。

展開型軽量平面アンテナ等の軌道上実証(DELIGHT/SDX)
宇宙太陽光発電システムなどに不可欠な大型宇宙構造物の構築技術として、宇宙空間における大型パネル展開時の挙動の計測や、パネルに取り付けられたアンテナでの地上局からの電波受信に成功しました。また、ペロブスカイト太陽電池など次世代宇宙用太陽電池の軌道上データの取得も行われました。
月・火星探査や“ポストISS”を見据えて
HTV-X1は今回のミッションを通じて、大型の実験装置をISSへ輸送できる現時点で唯一の補給船としての責務を果たしただけでなく、軌道上で多様な技術実証の機会を提供する能力を示しました。
JAXAの山川宏理事長は、プレスリリースを通じて「次号機以降も月・火星探査、ポストISSを見据えた将来の宇宙ステーションへの物資補給等にも活用可能な発展性のある宇宙機として、着実な開発と運用を進めてまいります」とコメントしています。
今後は、種子島で打ち上げ準備が進められている2号機「HTV-X2」に加え、将来の有人宇宙探査に向けた「自動ドッキング技術」の軌道上実証などを予定している3号機「HTV-X3」の打ち上げが計画されており、さらなる宇宙活動の発展に貢献していくことが期待されます。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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