インターステラテクノロジズ(IST)は2021年7月31日、株式会社TENGAとの協同プロジェクトとして進めてきた観測ロケット「TENGAロケット」(MOMO6号機)の打ち上げを実施しました。ISTによるとTENGAロケットの最高到達高度は約92km(暫定値)で、同年7月3日に打ち上げられた「ねじのロケット」(MOMO7号機)に続き、2回連続で打ち上げに成功しています。
■最高高度は約92km、放出されたTENGAロボの洋上回収にも成功
北海道スペースポート(北海道大樹町)の打ち上げ施設「LC-0」(Launch Complex-0)から7月31日17時ちょうどに打ち上げられたTENGAロケットは、打ち上げから2分後に計画通りエンジンの燃焼を終了し、17時3分には高度約92kmへ到達。機体は17時10分に射点の南東沖合29.54kmの海上へ着水しました。
TENGAロケットにはペイロード(搭載物)として、多くの人々から集めたメッセージ「愛と自由の寄せ書き」を収めたメッセージPOD、TENGA公式キャラクターのTENGAロボとスペースエッグドッグ、データ計測用のTENGA(飛行中の温度と圧力を計測)が搭載されていました。
このうちメッセージPODと公式キャラクターは最高高度付近で機体から宇宙空間へと放出されており、TENGAロボとスペースエッグドッグは海上へ落下した後に船舶を使って回収することにも成功しました。宇宙空間でのペイロード放出と洋上回収に成功したのは、日本国内の民間企業としては今回が初めてです。
また、今回の打ち上げでは前回の「ねじのロケット」に続き、飛行中の映像を届けるためのカメラがTENGAロケットの機体に取り付けられていました。ISTとTENGAによる打ち上げのライブ中継では、上昇する機体の下に広がる北海道の大地や、最高高度付近からの地球の眺め、そしてペイロード放出の瞬間といった映像がリアルタイムで配信されました。
ISTのロケットは2019年5月4日に打ち上げられた「MOMO3号機」(最高高度約113km)が初めて宇宙空間に到達したものの、2020年はエンジンの不具合により飛行の中断やエンジン点火の自動停止に至っていました。これを受けてISTは2020年から今年にかけて約1年に渡り、MOMOの信頼性向上と能力増強を目的とした全面改良を実施。改良型の「MOMO v1」にとって初の飛行となった7月3日打ち上げの「ねじのロケット」は、高度約100kmの宇宙空間へ到達しています。
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今回打ち上げられた「TENGAロケット」はMOMO v1として2度目の飛行にあたり、これまで7回打ち上げられたMOMOシリーズとして初めて2回連続で宇宙空間へ到達することに成功したことになります。
ISTは2020年12月にMOMO複数機の製造が可能な新工場を完成させており、MOMO v1へのバージョンアップにともなう機体の設計変更や地上支援設備の刷新とあわせて、機体の量産化と高頻度の打ち上げに向けた下地が整っています。打ち上げ後の記者会見においてIST代表取締役の稲川貴大氏は、国内民間初となる宇宙空間到達・宇宙空間でのペイロード放出・機体からのライブ映像配信といった実績を持つMOMOシリーズについて、今後は本格的な商業利用へ移ると言及。科学利用にとどまらず、企業のPRやブランディングも含めた観測ロケットの新たな市場を開拓できるとしています。
また、ISTは高度500kmの地球低軌道に超小型衛星の投入が可能なロケット「ZERO」の開発をMOMOの運用と平行して進めており、2023年度に北海道スペースポートから打ち上げることを目指しています。今夏のMOMO v1連続打ち上げ成功は、ISTが目指すロケットの量産化・商業化に向けて大きな弾みをもたらすことになりそうです。
なお、MOMOの目標到達高度はここから上が宇宙空間と国際的に定義されている高度100km(カーマン・ライン)で、前回のねじのロケットはほぼ目標通りの高度約100kmに到達しました。いっぽう、アメリカ連邦航空局(FAA)では高度80km以上を宇宙空間と定義しており、たとえば有人宇宙船「スペースシップツー」を運用するヴァージン・ギャラクティックはこの定義に則っています。
今回のTENGAロケットの最高高度は約92kmだったため、MOMOシリーズの目標高度である100kmには到達しませんでしたが、ISTでは高度80km以上とするFAAの基準をもとに宇宙到達と発表しています。
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Image Credit: インターステラテクノロジズ
Source: インターステラテクノロジズ
文/松村武宏