
(引用元:ESA/Hubble)
今回紹介するのは、みなみじゅうじ座の方向、約6400光年先にある散開星団「NGC 4755」のクローズアップ画像です。美しい色のコントラストから「宝石箱(Jewel Box)」の愛称で知られるこの星団ですが、実はこの画像、散開星団を遠紫外線から近赤外線の波長で撮影した初めての成果なんです。

複数の波長を合成した天体画像は今では珍しくありませんが、この画像が公開された2009年当時、散開星団を遠紫外線から近赤外線まで7つの波長帯で網羅した撮影例はありませんでした。幅広い波長域をカバーしたことで、星ごとの温度や進化段階の違いが色の差としていっそう鮮明に表れています。青白く輝く星々は表面温度が高い若い超巨星、そしてひときわ目立つルビーのような赤い星は、進化が進んで表面温度が下がった赤色超巨星です。
この色の違いを生み出しているのは、星の「質量」の差です。画像内で明るく輝く星は太陽の約15〜20倍の質量を持つ一方、最も暗い星では太陽の半分以下しかありません。質量の大きい星ほど内部の核融合反応が激しく進むため明るく輝きますが、そのぶん燃料の消費も早く、巨星へと姿を変えるスピードも速くなります。つまりこの1枚の画像には、同じ時期に同じ場所で生まれた星たちが、質量の違いによってまったく異なる人生を歩んでいる姿が凝縮されているわけです。
この画像を撮影したのは、ハッブル宇宙望遠鏡のWFPC2(広域惑星カメラ2)です。WFPC2は長年ハッブルの主力カメラとして活躍してきましたが、2009年のサービスミッション4で取り外され地球に持ち帰られました。この画像は、その直前に残された最晩年の仕事のひとつ。いわばWFPC2の集大成ともいえる1枚です。
このサービスミッション4ではWFPC2に代わって広視野カメラ3「WFC3」が新たに搭載され、紫外線から近赤外線までをより高い感度と解像度でカバーできるようになりました。それから15年以上が経ちますが、ハッブルは今も現役で観測を続けています。
冒頭の画像はESA/Hubbleから2009年10月29日付で公開されています。

編集/sorae編集部
関連記事
- さざれ石の中に見つけたカーネリアン(NGC 4755)
- "たて座"で輝く散開星団「M11」の星々 ハッブル宇宙望遠鏡が観測
- まばゆい輝き放つ散開星団「トランプラー14」 ハッブル宇宙望遠鏡が観測
- 息をのむ美しさ。宇宙の宝石箱の実験室(NGC 290)
参考文献・出典
- ESA/Hubble - A Hubble gem: the Jewel Box(heic0913a)
- ESA/Hubble - Opening up a colourful cosmic Jewel Box(heic0913 ニュースリリース)























