
(引用元:ESO)
夜空に描かれた無数の光の弧。星々がぐるりと渦を巻いているように見えますが、もちろん動いているのは星ではなく、私たちの足元にある地球のほうです。地球の自転によって、長時間露光の写真では星が軌跡を描きます。画像の中央やや右に、弧の中心となっている点がありますが、これが「南天の極(South Celestial Pole)」です。

この画像は2021年に、南米チリのアタカマ砂漠にあるESO(ヨーロッパ南天天文台)のラ・シヤ天文台で撮影されたものです。標高約2400メートルの乾燥した大地の上に、いくつもの望遠鏡が並んでいます。
画像の左側に見える白いドームの望遠鏡群が「ExTrA(エクストラ)」です。正式名称は「Exoplanets in Transits and their Atmospheres」、つまり「トランジットする系外惑星とその大気」です。フランス主導のプロジェクトで、口径60cmの望遠鏡3台がセットになっています。ExTrAが狙っているのは、太陽より小さくて暗い「M型矮星」と呼ばれる赤い星のまわりを回る地球サイズの系外惑星です。惑星が星の前を横切る際にわずかに光が暗くなる「トランジット法」で検出しますが、ExTrAは近赤外線の分光観測を組み合わせることで、大気のゆらぎや装置のノイズを抑え、精度の高い観測を実現しています。
ExTrAの隣には建設中の「BlackGEM(ブラックジェム)」望遠鏡も写っています。2021年の撮影当時はまだ台座や足場だけの状態でしたが、その後3台の望遠鏡が完成し、2023年に科学観測を開始しました。BlackGEMはオランダやベルギーの大学が運用する望遠鏡群で、LIGOやVirgoなどの重力波観測で示された位置候補に対し、合体現象に伴って現れる可能性のある可視光の対応天体を探し、追跡観測する役割を担っています。

地球サイズの系外惑星を探すExTrAと、重力波イベントに対応する可視光の天体を追うBlackGEM。目的はまったく異なりますが、2つの望遠鏡は同じラ・シヤ天文台の夜空の下で共演し、それぞれの「科学的な宝探し」を続けています。
編集/sorae編集部
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