こちらは、ベラ・ルービン天文台(チリ)の「シモニー・サーベイ望遠鏡」が観測した、渦巻銀河「M61(Messier 61)」。
おとめ座の方向、約5300万光年先にあります。地球に対してほぼ真正面を向けた位置関係にあり、渦巻腕(渦状腕)の様子がよくわかります。

この画像は、それぞれ特定の波長の光を通過させる4つのフィルターを介して取得したデータを着色・合成して作成されているのですが、実は"あるもの"が意図的に消去されています。
次の画像は、その“あるもの”を消去せずに作成したバージョン。M61の周囲に赤・緑・青の3色で塗り分けられたような光の点線が、いくつも現れているのがわかりますか?

これらの点線は、太陽系内の小惑星です。
遠くの恒星や銀河に対して、近くの小惑星は短い時間でも視野の中を移動していきます。そのため、連続で取得したデータを合成すると、小惑星の軌跡が線状に現れるというわけ。軌跡の色が途中で変化しているのは、使用するフィルターを切り替えながら観測を行ったためで、着色に使用された色の違いが反映されています。
NSF NOIRLab(アメリカ国立科学財団の国立光学・赤外天文学研究所)によると、初期観測の一環としてM61を含む「おとめ座銀河団」の方向、約10平方度(満月約45個分)の範囲を7晩かけて合計約10時間観測したシモニー・サーベイ望遠鏡は、約2100個もの小惑星を新たに発見しています。
【▲ シモニー・サーベイ望遠鏡の初期観測で発見された小惑星のデータを示した動画(英語)(Credit: RubinObs/NOIRLab/SLAC/NSF/DOE/AURA)】
高速自転する直径1km未満の小惑星を5つ発見
今回、NOIRLabのSarah Greenstreetさんたち研究チームは、シモニー・サーベイ望遠鏡が発見した小惑星のデータを分析したところ、信頼性の高い自転周期が得られた76個の小惑星から、非常に高速で自転する小惑星を複数発見したとする研究成果を発表しました。
そのひとつである小惑星帯の小惑星「2025 MN45」は、推定直径約710mという大きさがあるにもかかわらず、約1.88分で1回自転しているとみられています。「時間」ではなく「分」です。

日本の小惑星探査機「はやぶさ2」がサンプルを採取した小惑星「Ryugu(リュウグウ)」(直径約900m・自転周期約7.6時間)や、アメリカの小惑星探査機「OSIRIS-REx」がサンプルを採取した小惑星「Bennu(ベンヌ、ベヌー)」(直径約500m・自転周期約4.3時間)は、どちらもラブルパイル天体でした。
ラブルパイル天体は、瓦礫がゆるく集まって形を保っている天体です。自転が速すぎるとバラバラになってしまうので、自転周期の短さには限界があります。小惑星帯の小惑星では約2.2時間がラブルパイル天体の限界とされているので、約1.88分という自転周期は、2025 MN45がラブルパイル天体である可能性を否定します。
研究チームの計算によると、これほどの自転周期でも形を保つためには、岩石レベルの結合力が必要だといいます。2025 MN45は“高速回転する巨大な一枚岩”のような天体なのかもしれません。
2025 MN45の他にも、研究チームは自転周期が数分~十数分と非常に短く、直径は1km未満と推定される小惑星を4つ発見しています(※)。これら5つの小惑星のうち、NEO(地球近傍天体)に分類されるものは「2025 MJ71」の1つで、残る4つはいずれも小惑星帯の小惑星となります。
※…2025 MG56(約660m・約16分)、2025 MJ71(約120m・約1.92分)、2025 MK41(約540m・約3.78分)、2025 MV71(約930m・約13分)。括弧内は推定直径・自転周期の順。

ベラ・ルービン天文台では、シモニー・サーベイ望遠鏡を使って夜空の超広角・超高解像度のタイムラプスを10年間にわたり取得する観測プロジェクト「Legacy Survey of Space and Time(LSST)」が実施される予定です。
2025 MN45のような非常に高速で自転する小惑星帯の小惑星は今後も数多く見つかると予想されることから、研究者はこれらの天体の強度・組成・衝突の歴史に関する理解が深まるだけでなく、太陽系の形成と進化に関する理解も変わる可能性があると期待を寄せています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- NOIRLab - NSF–DOE Vera C. Rubin Observatory Spots Record-Breaking Asteroid in Pre-Survey Observations
- Greenstreet st al. - Lightcurves, Rotation Periods, and Colors for Vera C. Rubin Observatory’s First Asteroid Discoveries (The Astrophysical Journal Letters)










