高速で自転する褐色矮星を描いた想像図。自転速度が速くなるほど色の異なる帯の幅が狭くなると考えられている(Credit: NASA/JPL-Caltech)

【▲ 高速で自転する褐色矮星を描いた想像図。自転速度が速くなるほど色の異なる帯の幅が狭くなると考えられている(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

こちらは「褐色矮星」を描いた想像図です。恒星と惑星の中間にあたる褐色矮星は、天の川銀河だけでも数十億個存在すると考えられている天体です。

恒星はその中心部で起きる水素の核融合をエネルギー源として輝きますが、褐色矮星では水素の核融合が起きないため、恒星のように自ら明るく輝くことはありません。恒星と褐色矮星の境目となる質量は木星の約75倍(太陽の約7パーセント)、惑星との境目となる質量は木星の約13倍とされています。

ウェスタン大学のMegan Tannock氏らの研究グループは、これまで知られていたものよりも短い周期で自転する褐色矮星が3つ確認されたとする研究成果を発表しました。研究グループは、これらの褐色矮星が自転速度の限界についての理解を深めることにつながると考えています。

■地球の1日あたり20~24回自転、褐色矮星としての自転速度の限界に近い可能性

今回報告された3つの褐色矮星「2MASS J0348-6022」「2MASS J1219+3128」「2MASS J0407+1546」は、質量がそれぞれ木星の約43倍、約49倍、約67倍で、直径はいずれも木星とほぼ同じとみられています。

自転周期はそれぞれ約1.08時間約1.14時間約1.23時間で、これは約10時間周期で自転する木星の10分の1程度という短さ。地球で1日が経つあいだに、これらの褐色矮星は20~24回ほど自転していることになります。また、3つの褐色矮星の赤道における回転速度時速約36万km(秒速約100km)以上と算出されていて、木星や土星のように赤道付近が膨らんだ形をしていると予想されています。

▲自転速度を比較した動画。左から:褐色矮星「2MASS J0348-6022」、木星、土星▲
(Credit: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (IPAC))

発表によると、褐色矮星には誕生から時間が経つにつれて自転周期が短くなる傾向があるものの、3つの褐色矮星の年齢はそれぞれ異なるとみられています。それにもかかわらず自転周期が同程度なのは偶然の一致ではなく、褐色矮星としての自転速度の限界に近いことを示しているのではないかと研究グループでは考えています。Tannock氏は「これよりも自転が速いと褐色矮星自身が引き裂かれる可能性があります」と語ります。

いっぽう、褐色矮星に関する現在の理論モデルに基づくと、今回の研究で示された1時間の自転周期よりもさらに約50~80パーセント短くなることが考えられるといいます。研究に参加したウェスタン大学のStanimir Metchev氏は、褐色矮星の高圧な内部の状態は最先端の研究施設でも再現することが困難だとした上で、理論が褐色矮星の全体像を把握しきれていない可能性に言及。さらなる観測と理論の洗練により、褐色矮星が自ら崩壊することを防ぐ何らかの仕組みが明らかになることが期待されています。

なお、今回の研究では2020年1月に運用を終えたアメリカ航空宇宙局(NASA)の赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」をはじめ、ハワイのマウナケア山頂にあるジェミニ天文台の「ジェミニ北望遠鏡」、チリのラスカンパナス天文台にある「マゼラン望遠鏡」の観測データが用いられています。

 

関連:すばる望遠鏡が褐色矮星を直接観測、新装置&新発想の組み合わせによる初成果

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NOIRLab / NASA/JPL
文/松村武宏

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