こちらは「ペルセウス座」の方向およそ3000万光年先にある渦巻銀河「NGC 1003」です。中心部分の明るく黄色っぽいバルジを取り巻く渦巻腕には高温の若い星が多く存在することを示す青い領域や星形成活動が盛んな赤いHII領域があちこちに存在しており、まるで色とりどりの花が咲き乱れる広大な花畑のようです。
ここに写っているのはカラフルなNGC 1003だけではありません。ぱっと見ただけでもNGC 1003の周囲には別の渦巻銀河が幾つか写っていることがわかりますし、よく目を凝らしてみると、渦巻腕を持たない黄色っぽい楕円銀河や赤く小さく写る遠方の銀河が無数にあることがわかります。
なかには背後の銀河よりもずっと地球に近い天の川銀河の星もありますが、にじんだ点のように見える光の多くは単一の星ではなく、ひとつひとつが何百億、何千億もの星々が集まった銀河なのです。NGC 1003の背後には銀河団が広がっており、70分間の長時間露光で撮影されたというこの画像には銀河団に属する数々の銀河が詳細に捉えられています。
遠方に存在する無数の銀河を捉えた画像といえば「ハッブル」宇宙望遠鏡が南天の「ろ座」(炉座)の方向を撮影した有名な「ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド(HUDF)」や、HUDFの範囲を含む満月1つ分ほどの範囲を捉えた「ハッブル・レガシー・フィールド」などがありますが、NGC 1003のように天の川銀河の比較的近くにある銀河から遥か遠く銀河までが一度に捉えられている画像もまた、この宇宙の奥行きの深さを感じさせてくれます。
冒頭の画像はアメリカのキットピーク国立天文台にある口径4mのメイヨール望遠鏡によって撮影され、米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)から2021年1月5日付で公開されています。
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Image Credit: KPNO/NOIRLab/NSF/AURA
Source: NOIRLab
文/松村武宏