楕円銀河M89に見る「激動の時代」の痕跡

【今日の天体紹介: M89】

画像の中央に見えるのはメシエ天体として有名なM89」です。

というと文字通り単に楕円形のぼんやりした銀河を思い浮かべてしまうのですが、よく見ると薄い殻のようなものに囲まれ、細長い雲のような構造も見えます。

殻のような構造がどのようにできたのかは現在もわかっていませんが、過去数十億年にわたって小さな銀河を数多く吸収してきた名残りである可能性があります。あるいは別の大きな銀河が最近衝突して、ちょうど池に石を投げたときにできるさざ波のように見えているのかもしれません。

いずれにせよこうした観測データの研究から、少なくてもいくつかの比較的最近形成されたこと、外側のほうにある「ハロー」(M89の「殻」のように銀河を包み込むような構造)は本当は滑らかなものではなく、近くにいる小さな銀河の影響を受けて複雑な構造をしていることがわかってきました。私たちの銀河系も、ハローがそうした複雑な構造を持っている銀河の1つと言われています。

M89はから約5000万光年離れたおとめ座銀河団に含まれる銀河です。渦巻き銀河に比べてあまり動きがあるように感じられないかもしれませんが、銀河の衝突や吸収という「激動の時代」を経て今の姿になっているのかもしれません。

Image: Mark Hanson
Source: NASA
文/北越康敬