みなみのうお座で踊る銀河たち 南米の望遠鏡で撮影された「ヒクソン・コンパクト銀河群90」

こちらは「みなみのうお座(南魚座)」の方向約1億光年先の「ヒクソン・コンパクト銀河群90(HCG 90)」とその周辺の様子です。銀河群は銀河団よりも小さな数十個程度までの銀河が集まった集団で、特に狭い領域に数個の銀河が密集しているものはコンパクト銀河群と呼ばれています。

【▲ みなみのうお座の「ヒクソン・コンパクト銀河群90」(Credit: Inaf/Vst. Acknowledgment: M. Spavone (Inaf), R. Calvi (Inaf))】
【▲ みなみのうお座の「ヒクソン・コンパクト銀河群90」(Credit: Inaf/Vst. Acknowledgment: M. Spavone (Inaf), R. Calvi (Inaf))】

ぼんやりと輝く画像中央の銀河のうち、右上側の楕円銀河は「NGC 7173」、左下側の楕円銀河は「NGC 7176」です。楕円銀河は渦巻腕(渦状腕)のような目立つ構造を持たないのですが、画像のNGC 7176をよく見ると、右へ向かって伸びる渦巻腕のような構造が写っています。実はNGC 7176の右隣にあるのは別の渦巻銀河で、「NGC 7174」と呼ばれています。歪んで引き伸ばされたようなその形態は、3つの銀河の重力を介した相互作用を物語っています。

最後に、画像の上側へ目を向けてみましょう。ここには地球に対して真横を向けた位置関係にある、いわゆる「エッジオン銀河」として知られる渦巻銀河「NGC 7172」が写っています。ダンスを踊るかのような3つの銀河から離れているものの、NGC 7172もHCG 90を構成する銀河の一つです。その中心部には活動銀河核(※)が存在していて、NGC 7172は活動銀河の一種であるセイファート銀河(セイファート2型)に分類されています。

※…強い電磁波を放射する銀河中心部の狭い領域、活動の原動力は超大質量ブラックホールだと考えられている。

冒頭の画像はパラナル天文台(チリ)の「VLTサーベイ望遠鏡(VST)」に搭載されている広角カメラ「OmegaCAM」で取得したデータをもとに作成されたもので、VSTを管理するイタリア国立天体物理学研究所(INAF)から2024年4月16日付で公開されています。

 

Source

  • MEDIA INAF - Tripudio di galassie in tre nuove immagini del Vst

文・編集/sorae編集部