H3ロケットの開発状況を公開
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月2日、「H3」ロケット(新型基幹ロケット)の開発状況について発表した。現在のところ大きな遅れなどはなく、2020年度の試験機1号機の打ち上げを目指し、開発は着実に進んでいる模様だ。
H3ロケットは、現在活躍中のH-IIAロケットやH-IIBロケットの後継機として、JAXAと三菱重工業によって開発が進められているロケットで、2020年度の初打ち上げを目指している。かつては「新型基幹ロケット」と呼ばれていたが、今回の発表と同時に、正式名称を「H3」とすることが発表されている。
現在のH-IIAやH-IIBは高い信頼性を誇っているが、海外のロケットと比べると若干高いという欠点を持っており、また設計が古くなっている部分もあることから、高い信頼性はそのままで、より安価で、造りやすく扱いやすいロケットが望まれている。
また、H-IIAの開発からはすでに10年以上が経過しており、またH-IIAは1980年代後半から開発が始まったH-IIロケットの改良型であることを考えると、日本は実に20年以上にわたって、まったく新しいロケットを開発した経験がないことになる。技術には、設計図や部品だけではなく、人の知識や経験といった要素も欠かせない。それらが継承されないと、いずれ日本から大型の液体燃料ロケットを造る技術が失われてしまうことになる。そこで、H-II開発の経験を持つ人たちが現役である間に新しいロケットを開発し、それを通じて彼らが持つ知識や経験を次の世代に伝えてくという狙いもある。

H3はかねてよりJAXA内で研究が続けられており、2012年度から概念検討が行われ、2013年6月4日に開発を行うことが決定された。翌2014年3月25日には、開発を担う企業に三菱重工が選ばれ、2014年4月からロケットの概念設計を実施、そして2015年4月からは基本設計に入っている。
検討や設計が進められる中で、要求仕様や機体構成は変化を続けている。
今回の発表が行われた段階では、まずロケットの全長は63m、第1段、第2段機体の直径は5.2m、固体ロケット・ブースターの直径は2.5mであるとされる。打ち上げ能力は、地球観測衛星などがよく打ち上げられる太陽同期軌道に対して4t以上、また通信衛星などがよく打ち上げられる静止トランスファー軌道に6.5t以上を目指すとされる。打ち上げ能力は、ブースターや第1段エンジンの装備基数によって柔軟に変えることができる。また搭載環境条件(衛星にとっての乗り心地)や、打ち上げの受注から実際に打ち上げるまでの所要時間は世界標準以上が目標にされている。
打ち上げコストは、固体ロケット・ブースターを持たない最少構成で、H-IIAの約半額となる50億円を目指すとされる。商業用の通信衛星などを打ち上げる構成の目標コストについては記載がない。

ロケットの第1段には新たに開発される「LE-9」ロケット・エンジンが2基、ないしは3基が装備される。装備基数は打ち上げるものに応じて変更されるという。
固体ロケット・ブースターは、直径や推力などの性能は、現在H-IIAやH-IIB、またイプシロン・ロケットの第1段としても使われている「SRB-A」と変わらないが、ロケットとの結合や、分離する機構が、より簡素なものになるとされる。装着基数は0本、2本、4本で選択できる。
第2段にはH-IIAやH-IIBなどに装備されているLE-5Bエンジンの改良型が1基装備される。これについては、以前は新しいエンジンを開発するとされ、その後LE-5Bの改良型を1基、もしくは2基装備することで検討しているとされていたが、今年6月に「第2段エンジン1基の形態が妥当」と判断されたという。

射場での整備については、イプシロンで導入されたような自動点検機能を取り込み、整備にかかる期間をH-IIAの半分程度に減らすことを目指すという。また打ち上げ当日の運用者数も、H-IIAの100〜150人に対し、3分の1から4分の1以下へ減らせるという。
ロケットの組み立てにおいては、現在の整備組立棟を改修し、まず横置きで部品が組み付けられ、最終的に起立させて組み立てを行う方式を採るという。
またロケットを組立棟から射座へロケットを移動させ、そのまま発射台にもなる「移動発射台/運搬車」については新しく製造されるという。組立棟の近くに位置していた発射管制棟も、種子島宇宙センター内の竹崎エリアという別の場所へ移される。飛行中のロケットを追尾する追尾局も、アンテナの小型化や遠隔運用、集中管制化によって効率化を目指すとされる。
その他、推進剤の供給設備や射座などについては、現在使われているものを流用、もしくは改修して使用するとなっている。

今年度行われている「基本設計」では、ロケットのシステム仕様や、地上施設設備のシステム仕様、また打上安全監理システム仕様に基づいて、サブシステムや部品などの設計が行われる。またH3で必要となる要素試験などの実施も行われる。
そして2016年度には「詳細設計」に入り、技術試験用の機体の製造に向けて、サブシステムや部品などの具体的な設計を基にした図面の作成に入り、さらに地上設備の製造に向けた設計、要素試験の実施、そして技術試験用供試体の製造と一部の技術試験の実施、さらにはロケット・エンジンの燃焼試験設備の工事なども実施されることとなっている。
開発が順調に進めば、2020年度に試験機1号機が、また2021年度に試験機2号機が打ち上げられる予定になっている。これらの打ち上げが成功するかどうか、あるいは予定通りの性能が出ているかどうかによっても変わるが、現段階の予定では試験機2号機の成功をもって開発完了となり、実際に商業衛星などを打ち上げる実運用に入ることが計画されている。

 

Image: JAXA
Source: JAXA
http://www.jaxa.jp/press/2015/07/files/20150702_rocket_j.pdf

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