ロシアのイズヴェースチヤ紙は6月16日、アポロ計画で撮影された映像や、月から持ち帰られた月の石の行方について調査すべきとする、ロシア連邦捜査委員会の報道官ウラジーミル・マールキン氏によるコラムを掲載した。
ロシアと米国は、かねてよりウクライナ問題などで対立を続けているが、最近も国際サッカー連盟(FIFA)による一連の汚職事件に対し、米国外で起きた事件であるにもかかわらず、米司法省が捜査を主導していることに対して、ロシアのプーチン大統領などは不快感を表明している。この事件では、2018年にロシアで開催予定のワールドカップの選定において不正があったことも取り沙汰されており、米国からはロシアから開催権を剥奪することを求める声明が出されたことも合わせて、「ロシアの国際的な地位を貶めようとする米国の陰謀」などとする見方も報じられている。
マールキン氏のコラムはこうした状況の中で書かれたもので、1969年のアポロ11ミッションに関連して撮影された映像の磁気テープと、アポロの全ミッションで得られた合計約400kgの月の石が失われているとして、FIFA汚職事件と同様に、米国のアポロ計画に対しても疑いの目が向けられるべきであり、国際的な調査チームによる調査がなされるべきだと語っている。
「私たちは何も、アポロ宇宙船が飛んでいないとか、あるいは月面での映像が、単に地上で撮影されたものであると主張したいわけではない。しかし、すべての科学的な、そして文化的でもある遺産は、それすなわち人類の遺産であり、それらが失われたことは人類共通の損失と言える。調査を行い、何が起きたか明らかにすべきではないか」(マールキン氏)
しかし、マールキン氏の主張は誤りである。まずアポロ11ミッションで撮影された映像の磁気テープについては、2006年に米航空宇宙局(NASA)自身が紛失したことを認めており、さらに2009年には、地球観測衛星ランドサットのデータを記録するためにテープが使用され、アポロのデータに上書きされたことが明らかにされており、すでに結論は出ている。なおNASAでは、CBSニュースなどが保管していたテープや、NASAが保管していたキネコによるフィルムなどから、オリジナルに近い映像を復元する作業を行い、2009年12月に完了している。
また月の石についても、その大部分はテキサス州ヒューストンにあるジョンスン宇宙センターに保管されており、行方不明にはなっていない。またアポロ11、17のミッションで持ち帰られた石の一部は、世界中の科学館や博物館などに寄贈されており、さらにその寄贈先の中には、ロシアのモスクワにある宇宙飛行士記念博物館も含まれている。
■О пользе американских расследований - Известия
http://izvestia.ru/news/587742