インド宇宙研究機関(ISRO)は9月22日、火星に向けて航行中の探査機マーズ・オービターの、火星周回軌道投入時に使用するスラスター(ロケットエンジン)の噴射試験に成功した。その他の機器も正常で、9月24日の火星到着に向け、準備が整った。

マーズ・オービターはインド標準時9月22日14時30分(日本時間18時00分)、探査機のメイン・エンジンである液体アポジー・モーター(LAM)に点火した。燃焼時間は3.968秒で、問題なく推力が出ていることが確認された。また同時に軌道補正も兼ねていた。

この成功により、9月24日に予定されている火星周回軌道への投入は予定通り行われることになった。軌道投入開始の時刻はインド標準時9月24日7時17分32秒(日本時間9月24日10時47分32秒)で、燃焼時間は約24分間の予定だ。軌道投入時には、今回試験されたLAMに加えて、8基の姿勢制御用の小型スラスターも同時に噴射される。LAMは440N、小型スラスターは1基あたり22Nの推力を持つ。

軌道投入噴射後、探査機が通信を再開するのは7時47分(同11時17分)の予定だが、地球と火星との距離の関係上、通信に約12.5分のタイムラグがあるため、そのデータが地球に届き、運用チームが軌道投入噴射について確認を取れるのはインド時間で8時ごろ、日本時間では11時30分ごろになる見込みだ。

惑星の周回軌道への投入は高い技術が必要であり、インドにとっては大きな挑戦だ。

マーズ・オービターは2013年11月5日、PSLVロケットで打ち上げられた。マーズ・オービターはインドにとって、2008年に打ち上げた月探査機チャンドラヤーン1に続く2機目の宇宙探査機であり、そして初の深宇宙に飛ぶ探査機でもある。

探査機は、ISROがかつて開発した、通信衛星や測位衛星の技術を応用して製造されている。火星軌道投入時に使用するメイン・エンジンの名前が「アポジ・モーター」(遠地点で噴射するモーター)であるのも、そうした背景があるためだ。打ち上げ時の質量は1,337kgで、惑星探査機に必要な技術の実証と、また5種類の観測機器を駆使しての火星探査を目指す。

探査機は打ち上げ後、まず地球を回る軌道に乗り、そこから6回に分けて軌道変更を行った。途中、4回目の軌道変更において不具合が起き、予定していた軌道に乗れなかったものの、修正を行い挽回した。そして12月1日に、火星へ向かう軌道に乗った。その後は順調に航行を続け、今年9月14日には、火星軌道投入時に使用されるコマンドの送信が行われた。探査機の状態は正常で、火星軌道投入の準備は整っている。

火星到着後は、火星にもっとも近い高度が365.3km、もっとも遠い高度が80,000kmの楕円で、かつ赤道からの傾きが150度の軌道を回り、6カ月から最大10カ月に渡る探査を行う予定となっている。

火星へは、つい先日NASAの探査機メイブンが軌道投入に成功しており、マーズ・オービターもそれに続くことが期待される。

 

■Welcome To ISRO :: Press Release :: September 22, 2014
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