宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月31日、宇宙科学研究所(ISAS)の相模原キャンパスにおいて、小惑星探査機「はやぶさ2」を公開した。機体はほぼ完成した状態にあり、この後打ち上げに向けて、鹿児島県の種子島宇宙センターへ輸送される。

「はやぶさ2」は、多くの困難を乗り越えて小惑星「イトカワ」からサンプルを持ち帰った「はやぶさ」の後継機にあたる。先代の教訓から、搭載機器を増やしたり、イオン・エンジンや自律機能を改良するなどし、トラブルを未然に防ぎ、確実な宇宙探査を実施するための対策が施されている。またより多くのデータを送受信できる装置や、小惑星内部の石や砂を採取するため、地表面を穿ち人工のクレーターを作る装置を持つなど、新しい技術も多く盛り込まれている。

「はやぶさ2」が目指す小惑星「1999 JU3」は、岩のようだったイトカワとは異なり、炭素や水を含む小惑星だ。「はやぶさ2」がサンプルを持ち帰ることで、太陽系の起源とその進化や、生命がどのように誕生したかといった謎を解き明かすカギなることが期待されている。

今回公開されたのは、ほぼ完成した状態の「はやぶさ2」だ。ほぼ、というのは、今後種子島宇宙センターに輸送される前にいくつかの調整が行われ、またイオン・エンジンの燃料であるキセノン・ガスや、化学スラスターの推進剤などは種子島宇宙センターで充填されるためだ。

また今回、「はやぶさ2」に搭載される小型の着陸機MASCOTの開発試験用モデルも公開された(実機はすでに「はやぶさ2」内に収められている)。MASCOTはドイツ航空宇宙センター(DLR)が中心となり、フランス国立宇宙研究センター(CNES)とJAXAで共同開発された機体で Mobile Asteroid Surface Scout の頭文字から名付けられた。

MASCOTは質量10kgほどの箱型の機体で、「はやぶさ2」が1999 JU3に到着後、分離されて小惑星の表面に着陸。内蔵している重りを動かすことで、起き上がったり、ホップしたりして移動することが可能だ。またまたカメラや熱センサー、磁力計、分光顕微鏡といった観測機器も搭載し、1999 JU3の表面を直接観測することが可能だ。

MASCOTのチームには、現在チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星で探査を行っている彗星探査機ロゼッタに搭載されている小型着陸機フィラエの開発に関わった人々が多く参加しており、この手のロボットに関して非常に高い技術を持っている。「はやぶさ2」の、さらに先の宇宙探査を考えるとき、今からこうしたチームと共同で探査を行い、お互いにノウハウを蓄積し、信頼関係を築けることは、大きな意義がある。

また、先代「はやぶさ」と同様に、米航空宇宙局(NASA)とも協力体制を持ち、JAXAからミッション運用への参加機会と、1999 JU3のサンプルの提供を条件に、NASAが持つ深宇宙ネットワーク(DSN)の使用や、地上からの小惑星の観測の支援、そしてNASAが計画している小惑星探査機OSIRIS-RExが持ち帰る予定のサンプルの提供を受ける予定だ。加えて、やはり「はやぶさ」と同様に、カプセルの着陸が予定されているオーストラリアとも協力体制を組んでいる。先代「はやぶさ」によって築かれた信頼関係が次に活きていることもまた、「はやぶさ」の残した大きな功績のひとつと言え、これもまた将来の宇宙探査で、大いに活きてくるに違いない。

「はやぶさ2」の打ち上げ日時はまだ発表されていないが、今年の冬頃になる予定だ。打ち上げ後は、まず約1年後に地球スイング・バイを実施して加速し、2018年の6、7月頃に1999 JU3に到着する。そこで探査活動を行い、2019年11、12月頃に帰路に就く。地球への帰還は、今から約6年後の、2020年11、12月頃になる予定だ。