ISCコスモトラス社は18日、カザフスタンの地球観測衛星カズEOサット2を搭載したドニエプルロケットの打ち上げを、20日に実施すると発表した。同機にはカズEOサット2に加え、日本、スペイン、ロシア、サウジアラビアの小型衛星など、合計33機もの人工衛星が搭載される。

同社によれば、すでにすべての衛星がロケットに搭載されており、打ち上げに向けた最終試験が行われている。打ち上げ日時は現地時間2014年6月20日1時11分11秒(日本時間2014年6月20日4時11分11秒)に設定されている。打ち上げはロシアのオレンブルク州にあるヤースヌィ宇宙基地から行われる。

今回の打ち上げでは、カザフスタンのカザフスタンの地球観測衛星カズEOサット2をはじめ、日本の東京大学が開発した小型衛星「ほどよし3号」や「ほどよし4号」など、合計33機もの衛星が搭載される。一度の打ち上げでの衛星数としては過去最多だ。ちなみに現時点での最多記録は、2013年11月21日に打ち上げられたドニエプルで、このときは32機の衛星を搭載していた。

ドニエプルはNATOコードネームSS-18サタンとして知られる、旧ソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)R-36M UTThを衛星打ち上げ機に転用したロケットで、1999年からこれまでに19機が打ち上げられ、18機が成功を収めている。

R-36M UTThは原型となるR-36を基に、アメリカのICBMサイロなど、軍事基地を破壊するために開発され、1979年から実戦配備された。その後、第1次戦略兵器削減条約(START I)によって最盛期の半分にまで配備数が減らされることとなり、それによって余剰となったミサイルを改造し、人工衛星を打ち上げるロケットに転用しようという動きが生まれ、ロシアとウクライナ、カザフスタンは共同でISCコスモトラス社を設立した。

1999年に初の打ち上げを成功させ、その後もスローペースではあったが打ち上げ成功を重ねていた。2006年には初の打ち上げ失敗を喫するも、翌2007年には打ち上げが再開され、運用は続けられた。

しかし2011年8月17日の打ち上げの後に事業が止まり、その将来性が危ぶまれることになった。その理由としては、ロシアとウクライナとの間で金銭的な問題が生じたためとか、あるいは古いICBMを転用することによって低コストな衛星打ち上げができるという目論見が外れ、大して利益がでなかったためだとか、様々な情報があるが、おそらくそのどれも正しいだろう。

またドニエプルには四酸化二窒素と非対称ジメチルヒドラジンという、人体や環境に有害な推進剤が使われていることから、カザフスタン政府やロシア国防省は運用に対して快く思っていないとも伝えられる。さらに旧ソ連時代にR-36の開発、生産を行っていた企業は、現在独立国となったウクライナにあり、ロシアにとってはミサイルの維持が難しくなりつつあった。現在ではロシアのクリミア侵攻によりロシアとウクライナとの関係がさらに悪化しており、今後ドニエプルの打ち上げにさらなる悪影響が出る可能性がある。

また、すでにロシア軍は固体燃料を使用し、また地下サイロではなく移動式の発射装置(TEL)から発射できるトーポリMミサイルなど、R-36の後継機の配備を進めており、現在実戦配備されているR-36Mはすべて、2019年ごろを目処にトーポリMに置き換えられるだろう、と伝えられる。したがって、ドニエプルは遅かれ早かれ姿を消すことになるだろう。

 

■Launch Date of Dnepr Cluster Mission
http://www.kosmotras.ru/en/news/151/